小田嶋:それで、「君ら、大学を出てぶらぶらしているんなら、俺のゴーストをやれよ」みたいな感じになって、赤坂に会社を設立した。その後、50億円の借金を作って、逃走して行方不明になった。
津田:……。50億円って何に使ったんですかね。
小田嶋:今でいえば、ライブドアじゃないですけど、若いやつを集めて起業しようとしていた、みたいだね。
津田:なるほど。
小田嶋:津田さんの場合は、ライターというよりもコーディネーターみたいな、いわゆるメディア・アクティビストという不思議なところに行くわけですが、それはどういう経緯で。
津田:それはフリーライターをずっとやっていたからだと思います。フリーライターって、どんなにいい連載をやっていても、雑誌はなくなるし、編集者とすごくいい関係を築いていても、その編集者は異動する。そしたらもう仕事が来ない。僕は駆け出しのころ、この日経ビジネスオンラインを運営している日経BP社にものすごくお世話になっていて、『日経ネットナビ』とか『日経ネットブレーン』とか『日経クリック』とかで原稿を書いてたんですが、担当編集が突然建築雑誌の『日経アーキテクチャ』とかに異動しちゃうんですよ。メールには「異動先でもお力添えいただきたく」とかテンプレのように書いてあるわけですが、絶対に仕事来ないだろ!っていう(笑)。
小田嶋:往々にして「○○グラフ」とか、IT系と無関係なところに行っちゃいますよね。
生きるために、新規の仕事は必ず受注せよ

津田:そういう不条理が常に起き、3カ月先に仕事があるかどうか分からない、という不安が常にあったので、とにかくいろいろなことをやろうと思いまして。
小田嶋:だから我々には、「来た仕事を断らない」という嫌な癖が付くんだよね。
津田:付きますね。特に新規の仕事は、絶対にやろう、と。
小田嶋:そう。どんなに安くても怪しくても変でも、新規の仕事である以上は必ず受ける、というふうになっていて。
津田:それは僕もルールにしていました。
小田嶋:俺もそう言われましたよ、先輩に。「仕事を断るということはあり得ないよ。落とすということはあり得るけど」、と。
津田:そうそう、それはしょうがない。
おいおい、そこは逆じゃないの!?(思わず)
小田嶋:いや、基本的に断るということはあり得ない。
津田:だから新規の仕事で、死にそうな思いはいっぱいしました。光ファイバーとか、FTTHとかが盛り上がり始めていたころ、つくばの研究所に行って取材してくれ、という依頼がありましたよ。あと、バイオメトリクスという、今だったらiPhoneの指紋認証とかで当たり前になった技術ですが、それを取材してきてくれ、と。10年以上前ですよ。どっちも日経BPの仕事だったな。
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