:僕が挙げた『斜陽』というのは、太田静子という女性が書いた日記を太宰が書き直したと言われている小説なんだよね。静子とは正式な婚姻関係になくて、太宰は『斜陽』を書き終わったら静子と会おうとしなかった、とNHKのドキュメンタリーでやっていた。

 それを見て、太宰のだめさ加減というのは、僕にもよく分かった。妊娠していた静子を捨てたとき、妻は別にいて、しかも心中で一緒に死んだのはまた違う女だからね。もうめちゃくちゃだよね。

小田嶋:だから太宰が女にモテただろうことは、疑いようがない。口がうまいんだしさ。

:太宰が太田静子に当てた手紙、ラブレターですよね。これはすごい。見事なものですよ。

小田嶋:女にモテるということの一番困ったことは、必ずしも立派な人がモテるわけじゃない、というところで。

結局、「なんであんなやつがモテるのか」なの?

:むしろだめなやつがモテるんだよね、多くは。

小田嶋:だから腹が立つわけだよ(笑)。立派な人がモテているなら別に腹は立たないで、恐れ入るわけだけど、そうじゃないんだよ。なんだ、こういうやつが、こういうようになっているのか、という感じがするのが、困ったところなのよ。

:やっぱりだめな感じというのがいいんだろう。

小田嶋:読者が付いている、ということも含めてだけど、人ってわりと、ああいうだめなものに惹かれるところがあるよね。特に女の人の場合。立派な人が女にすごくモテているのかというと、必ずしもそうではなくて、立派な人は立派な人でそれなりに支持する女性もいるだろうけど、モテたりはあんまりしてない。そういう気がしてしょうがないわけね。

そういう気がしてしょうがないんですね。それで?

(続きます)

日経ビジネスオンラインの大人気連載が、再び書籍化されました。
「人生の諸問題・シーズン2」に、内田樹さんと小田嶋隆さん、高木豊さんと岡康道さんの対談を加えて大幅加筆。
グローバル化を超える人生哲学、ガラパゴス化。その深淵を語り尽くします。

お買い求めはこちらから

大好評の単行本第一弾『人生2割がちょうどいい』も絶賛発売中! 併せて読めば人生も仕事も、さわやかな秋空のようにスッキリすること請け合いです。

『人生2割がちょうどいい』はこちらからどうぞ。

(「人生の諸問題 令和リターンズ」はこちら 再公開記事のリストはこちらの記事の最後のページにございます)


「人生の諸問題」は4冊の単行本になっています。刊行順に『人生2割がちょうどいい』『ガラパゴスでいいじゃない』『いつだって僕たちは途上にいる』(以上講談社刊)『人生の諸問題 五十路越え』(弊社刊)

この記事はシリーズ「もう一度読みたい」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。