:だから、初対面のときに、どういう自分になっているか、ということによって、そこから後の展開が変わってきちゃうわけで、それは本云々だけじゃないと思うんですよ。初対面のときは、お互いどういう感受性で世の中と向き合っているか、というプレゼンテーションをし合うわけだけど、そのときに、ちゃんとした人として出会っていたら、もうそんなことはできなかった。

小田嶋:男と女の理解と共感の先にセックスがあるんだ、という話だとしたら、お互い理解し合って共感し合うために、本の話も音楽の話もした方がいいのかもしれないんだけど、若いときはそう思ってないのよ。理解と共感があったら、セックスなんて恥ずかしくてできないでしょう、みたいなことになっているわけ。だからセックスしちゃうためには、余計なことは話さず、いきなり本題に入りましょう、みたいなことですよ。

:つまり最初から、会ったときから、そういう目で俺を見ている女の子じゃないとだめなんだよ。これ、ずっと昔の話ですよ。

小田嶋:そうだよね。

あなたたち、いいかげんにしなさい

:だから俺はそういう人間じゃないんだよ、と思いながらも、この場合は話の流れに乗っちゃおうかな、というか、その彼女の認識に俺を合わせてあげようかな、みたいな、ね。

俺のせいじゃない、と。

:俺のせいじゃない。俺は期待されていることをやっているだけなんだ。

まあ、岡さんって面白い方ですねえ。おほほほ・・・。

:そ、そう?

ええ、本当に、おっしゃることが・・・。

小田嶋:おい、怒ってるぞ。

:そ、そう? ほ、本の話に戻ろうよ。

小田嶋:戻ろう。何でそんな話になったんだろう?

:本の話は信仰告白的なところがあるからじゃないか。だから恋愛観にも結び付くんだよ。

小田嶋:だからゆえに、そのことができなくなっちゃう、というのもあるんだよね。若いころは確かにそうですよ。「ああ、小田嶋くん、そんな本を読むんだ」「そう、正しく読書をしようね」という関係と、とても軽はずみな関係とを分けていたでしょう。

:だけど、軽はずみと言ったってさ、やっぱり好きじゃないと全然面白くないわけじゃない、結局。

小田嶋:そうなんだけどね。でも、そこのところの幻想の持ち方だよ。だから自分が軽はずみになれる――またこの話に戻っちゃったじゃないか。

(軽はずみな会話はまだまだ続く…。)

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