:だから、初対面のときに、どういう自分になっているか、ということによって、そこから後の展開が変わってきちゃうわけで、それは本云々だけじゃないと思うんですよ。初対面のときは、お互いどういう感受性で世の中と向き合っているか、というプレゼンテーションをし合うわけだけど、そのときに、ちゃんとした人として出会っていたら、もうそんなことはできなかった。

小田嶋:男と女の理解と共感の先にセックスがあるんだ、という話だとしたら、お互い理解し合って共感し合うために、本の話も音楽の話もした方がいいのかもしれないんだけど、若いときはそう思ってないのよ。理解と共感があったら、セックスなんて恥ずかしくてできないでしょう、みたいなことになっているわけ。だからセックスしちゃうためには、余計なことは話さず、いきなり本題に入りましょう、みたいなことですよ。

:つまり最初から、会ったときから、そういう目で俺を見ている女の子じゃないとだめなんだよ。これ、ずっと昔の話ですよ。

小田嶋:そうだよね。

あなたたち、いいかげんにしなさい

:だから俺はそういう人間じゃないんだよ、と思いながらも、この場合は話の流れに乗っちゃおうかな、というか、その彼女の認識に俺を合わせてあげようかな、みたいな、ね。

俺のせいじゃない、と。

:俺のせいじゃない。俺は期待されていることをやっているだけなんだ。

まあ、岡さんって面白い方ですねえ。おほほほ・・・。

:そ、そう?

ええ、本当に、おっしゃることが・・・。

小田嶋:おい、怒ってるぞ。

:そ、そう? ほ、本の話に戻ろうよ。

小田嶋:戻ろう。何でそんな話になったんだろう?

:本の話は信仰告白的なところがあるからじゃないか。だから恋愛観にも結び付くんだよ。

小田嶋:だからゆえに、そのことができなくなっちゃう、というのもあるんだよね。若いころは確かにそうですよ。「ああ、小田嶋くん、そんな本を読むんだ」「そう、正しく読書をしようね」という関係と、とても軽はずみな関係とを分けていたでしょう。

:だけど、軽はずみと言ったってさ、やっぱり好きじゃないと全然面白くないわけじゃない、結局。

小田嶋:そうなんだけどね。でも、そこのところの幻想の持ち方だよ。だから自分が軽はずみになれる――またこの話に戻っちゃったじゃないか。

(軽はずみな会話はまだまだ続く…。)

日経ビジネスオンラインの大人気連載が、再び書籍化されました。
「人生の諸問題・シーズン2」に、内田樹さんと小田嶋隆さん、高木豊さんと岡康道さんの対談を加えて大幅加筆。
グローバル化を超える人生哲学、ガラパゴス化。その深淵を語り尽くします。

お買い求めはこちらから

大好評の単行本第一弾『人生2割がちょうどいい』も絶賛発売中! 併せて読めば人生も仕事も、さわやかな秋空のようにスッキリすること請け合いです。

『人生2割がちょうどいい』はこちらからどうぞ。

(「人生の諸問題 令和リターンズ」はこちら 再公開記事のリストはこちらの記事の最後のページにございます)


「人生の諸問題」は4冊の単行本になっています。刊行順に『人生2割がちょうどいい』『ガラパゴスでいいじゃない』『いつだって僕たちは途上にいる』(以上講談社刊)『人生の諸問題 五十路越え』(弊社刊)

この記事はシリーズ「もう一度読みたい」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。