小田嶋:そういう人たちが、ある囲いの中ではすごくつまらない人になって、というのは、あれはちょっと新鮮な光景でしたね。ほら、井上ひさしという人がお亡くなりになったじゃない。あの人が後年書いたもので面白いものってないんだけど、それを言っては絶対にいけない、というみたいなさ。

:『不忠臣蔵』という作品は面白かったぞ。『吉里吉里人』は退屈だったけど。

先回りが怖い人を作り出す

小田嶋:俺は、おっかない人としてのエピソードを関係者からいくつか聞いていたんだけど、井上さん自身は、本当はおっかない人ではなかったはずなんだよ。でも彼は文学賞の審査員をいくつか横断的にやっていたでしょう。

 松本清張、および司馬遼太郎亡き後の、日本文学界のエースみたいなことになっちゃっていたから。だからあの人の機嫌を損ねちゃいけない、というふうに、いろいろな人たちが先回りして。こういうことを言うのは、出版界ではすごく言いっこなしの話なんだけど。

そうですよね。

小田嶋:だから俺も文学賞とかは一応あきらめなきゃいけなくなったかもしれない。

じゃあ、小田嶋先生は賞をあきらめた、ということで。

小田嶋:賞はあきらめました。

とはいえ、ものすごく若い書き手からみれば、小田嶋さんだってえらい部類かもしれませんよ。

小田嶋:このごろ運転していて、おまわりさんが自分より若いというのは、やばいよね。

:それは若いよ。俺たちより上だったら、相当えらいよ。

小田嶋:だいたい自分の息子みたいなおまわりさんに叱られるわけだよ。それで、ごめんなさい、と言っている自分に適応できない。昔は簡単に謝ることができたんだけど。

:おまわりさんもさ、今の世の中だと訴えられるから、ものすごい低姿勢なんだよね。

小田嶋:そうなの。あれがまた腹が立つというか。申し訳ありません、お時間取らせますが、あの標識をお気付きじゃなかったでしょうか、なんて。

リリー・フランキーの泣ける名台詞

:お前はどこの御用聞きなのかい、という。僕はこの間、仕事でリリー・フランキーさんと会ったんですね。サッポロビールのTVCFで「大人エレベーター」というのをやっていて、妻夫木聡君が人生の先輩に「歳を取るってどういうことですか」と聞くシリーズ。

 エレベーターの49階を押すと、49歳の大人が登場するんだけど…

小田嶋:リリー・フランキーが49歳で出てくるのか。

:そう。それで妻夫木君がリリー・フランキーさんに「歳を取るってどういうことですか」と聞いたら、「どんどん失っていくこと。喪失感がどんどんたまってきて、これからどんどんつらくなってくるぞ」と答えていたね(笑)。

小田嶋:それはシナリオじゃなく?

:全然、シナリオじゃなくて、フリーで回しているんだよね。シナリオにすると、どうせ広告屋が書きそうなことになっちゃうから。

 それでリリー・フランキーさんもだいたい俺たちと同じような世代で、やっぱり気が付いているんだな、と思ったよね。

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