岡:でも、堀江さんはさ、頼りにしているフォロワーを通して世界を見るんだ、と言っているよね。あれ、ソーシャルフィルターというの? その方が日経新聞を全部読むより、時間の効率もいいから、そういうふうにしてツイッターを使っているって。
勝間さんもそういうことを言っていますよね。
「公衆の敵」になれたことが、ホリエモンの偉さ
小田嶋:堀江なにがしの偉いところは、一度パブリックエネミーをやっているから、ほかの人が抱く、公衆への幻想がないのよ。
小田嶋さんが見て、ホリエモンは「演じている」という感じではないんですか。

小田嶋:神経が太いから、だらだらしゃべっているだけで、別に称賛を欲しがっているわけではない。
岡:そうなんだ。
小田嶋:だってあれだけ国民的にけなされた人だから、いまさら人に好かれようとも思ってないような。
小田嶋さんも、ちょっとできそうな感じがしますけど。
小田嶋:いや、俺はあんなに神経は太くないし、公衆の敵になる覚悟はないから。あいつは立派なものだよ。
岡:あ、そう、むしろ評価するんだ。ホリエモンは立派だと。
広告メディアとしてとらえた場合、岡さんは何か可能性は感じますか。
岡:結局、時間がたてばそこの幻想も崩れると思うんだけど、今は「本音が聞ける」とか、「消費者の隠れていた欲求が見える」とか、あるいは、「この広告キャンペーンがどうだったかについて、すぐに反応が分かる」とか、そういうふうには思われているんじゃないですかね。
それはマーケティングの観点からということですよね。
岡:マーケティングに関してですね。
広告表現の観点からじゃないですよね。
岡:表現ではない。
小田嶋:だってツイッターって、あんまりマスに向けてやることじゃないもんね。あらゆるメディアには、先行者利得みたいなものが必ずあって、あのテレクラでさえ、最初のころは面白かった、ってテレクラ通は言うわけ。それがいまやもう、どうしようもない場所になっていますけど。
見慣れないことは、クレームの対象になります
岡:僕に関して言えば、表現にとっての影響はむしろマイナスを感じているのが今日このごろです。ツイッターにしても、何にしても、誰でも何でも匿名ですぐに言えるようになっちゃったから。
例えば新しい広告キャンペーンが始まったら、今ではすぐに、ものすごい批判的なメールが来る。それが同業者の牽制なのか、本当の消費者の声なのかは分からないんだけど、やっぱり作っている方も傷付くし、それから送り手となるクライアントの方だって傷付く。それがたび重なったら、クライアントは実際に放送を取りやめるわけだから。
小田嶋:結構みんな打たれ弱いからね。特に企業の人間とかってね。だって、3000人が面白いな、と思っていても、5人ぐらいが「許さない」と言うと、それでつぶれたりするでしょう。

岡:例えばTVCFでバックに流れる歌の歌詞を作るでしょう。そこに「生きることはきれいじゃなくなること」といった、本当のことを書くとする。
そういう言葉がCMとしてはちょっと挑戦的だ、ということはもちろん分かってやっているんだけど、だからせめて、きれいな気持ちだけは持っていたいね、ということを逆に浮かび上がらせることなんだけど。でもそれがだめだ、という。
小田嶋:批判する人は、どうしてだめだ、と言ってるの?
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