岡:ということは、かなり加工した役を演じることになるに違いない、と思うんだよね。それで、お互いにそういう役を演じている者同士が褒め合ったりしても、あんまり意味はないよね。
小田嶋:意味ない。
岡:時間がもったいないし。
小田嶋:意味もないし、つぶやいちゃっている人たちが、自分のつぶやきがこの半年ぐらいの間に少しずつ変遷していることに、もしかしたら自分で気が付いてないのかな、と。
俺はツイッター有名人をずっとウォッチングしているんだけど、そうすると、あの人たちがだんだん自己肥大してきているのが見えてきちゃって。
自己肥大の症状を見て喜ぶ
例えば誰をフォローしているんですか。
小田嶋:勝間和代でしょう。堀江貴文でしょう。あと、ツイッター・ドラマを書き始めたっていう北川悦吏子。いつでもみなさん、とても痛々しい本音を、ばらばらとばらけていて、ああ、こんなことを……と。
岡:どんなことになっちゃうの?

小田嶋:自分が今朝、目玉焼きを食った、みたいなことを言うでしょう。そうすると「うわ、すごい」とか、すぐ反応が返ってくる。で、それに答えてまたつぶやく、という、すごく無邪気なやりとりなんだけど、それをつぶやき返しもせずにじっと眺めている俺からすると、こいつはこんなつまらないプライバシーを開陳して、それに対する反応をこうやって喜んで、いちいち返事をしているんだな、というのが見えちゃう。他人同士が上の方でつぶやいているのを、とても低い位置で見ていると、ばかだな、という感じがもろ見えなわけね。
岡:ただただ、それだけなの?
小田嶋:うん。
岡:何かだめになっちゃうような気がするんだよね、そういうふうにいろいろなことを垂れ流すと。
小田嶋:昔、クラスに置いてあった交換日記みたいなのがあったじゃない? 内輪だけで通じる用語で、恥ずかしいやりとりが延々と繰り返されているサークルのノートみたいなのがあったでしょう。
岡:あった、あった。
交換日記、さらしものの刑
小田嶋:それはサークル内で読んでいるだけならいいんだけど、それをサークル外のやつに読まれたときの恥ずかしさ、みたいなのがあるじゃない? それなのよ。
小田嶋さんと岡さんが高校時代に交わしていた、文体模写の交換日記ですね。(記念すべきシリーズ第1回。「『文体模写』『他人日記』『柿』」)
小田嶋:そうそう、ああいう恥ずかしいもの。俺と岡との間でやっているのはいいんだけど、それをまったく知らないやつに、「何、これっ」て、笑われるような。
岡:見られたくないし、言われたくない。
それは読みたいですけど。
小田嶋:いや、読みたいかどうかが問題じゃなくて、それを他人に読まれている、ということをあんまり意識しなくなっちゃうんだよ、つぶやいている人たちって。
岡:まあ、それはそうでしょうね。
小田嶋:つぶやき返してくる人たちのフォローだけで世界を見ているから、まったく黙って読んでいる人たちという、圧倒的多数のリード・オンリー何とかっていう「ROM」(リード・オンリー・メンバー)の人たちの存在を忘れていると思います。
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