本記事は2007年10月26日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

(日経ビジネス電子版編集部)

(どうせなら前回から読む)

ウェブというメディアを格好よく言うとそれは「新時代のフレーム」になります。ウェブ時代を迎えて私たちは、そのフレームの中で何ができるか、どう稼げるかを必死で探しているわけですが、フレーム自体を疑うことは、あまり発想しません。

 でも、岡さん、小田嶋さんは逆で、決まりきった約束ごとをルールから変えてしまう、あるいは違う方向から徹底的に眺めてしまう、という態度が一貫していますね。まあ、それは時には危険なことでもあるのですが。

:世の中のルールねえ。僕は家を27歳で買って、32歳で売ったんだけど。

ということは、バブル前夜に買って、頂点で手放した。

:だから、寄り切ったわけ。ちっちゃな家だったんだけどね。2400万円で買った一戸建てが、4200万円で売れた。

小田嶋:勝ち逃げ。

:勝ち逃げです。でもまあ、離婚によって全部なくなりましたけどね(笑)。

なるほど、回りもんですね。

クリエイティブディレクター 岡 康道氏

クリエイティブディレクター 岡 康道氏 (写真:大槻 純一、撮影協力「杏奴」※当時は東京都豊島区のお店でしたが、現在はリンク先に移転されています)

:まったくもって、回りもん。で、買う時にどうしたかというと、「頭金が半分ある」とうそを言って、F銀行とM銀行の2つにローンを依頼したの。頭金が半分あれば、あとの半分は貸しましょう、ということになりやすいじゃない? それでじっとこう、どっちに謝ったら許してくれるかな?? と様子をうかがっていた。最終的にF銀行の方が行ける、と思って、M銀行でローンを設定した後に、F銀行に「話があります。実は頭金はありません」って(笑)。

F銀行さん。「お世話に」なりました

信じられない。

:その時点でローンの契約とともに、第1抵当はM銀行に付いている。F銀行は「第2抵当で1200万円を融資してくれ」というこちらの話を飲まざるを得ないわけですよ。で、頭金ゼロでも家は買えた、と。

小田嶋:今はあり得ないよ。それ、バブル前夜ならではでしょう。土地が上がることが前提だった時代だからだよね。銀行がローンを組んで土地を買ってくれ、と言いに来た時代ならでは。

:F銀行にはずっとうそをついていて、ぎりぎりで「ごめんなさい」と。「本当に申し訳ありません」と(笑)。でもね、そうやって甘えたF銀行はね、やっぱりいいかげんな銀行で。

小田嶋:そりゃ、いいかげんだろうな。

:俺はね、固定金利で借りたんだけど、それが、いつの間にか変動になってたんだよね(笑)。途中から引き落とし金額が高く変わってたんだもの。

小田嶋:なんだよ、それ。

:それで、おい、固定なのに返済金が変動するって変じゃないの? という話を当然、F銀行にはするよね。そうしたらF銀行では、担当者を転勤にしちゃった。

すごい贈り物

小田嶋:なるほど。

:銀行側に会ったら会ったで、長期プライムレートにのっとって金利が決まっているとか、これは銀行協会の何とかで決まったことですからとか、いろいろ釈明があるの。でも、こっちはそんなの関係ないよ。で、最後に、あっそう、と。じゃあ支店長に言っておいてくれ。明日、N新聞の記者が行くからね。全部その説明をしろよ、と言って俺は銀行から出たわけ。

ちなみにその時、N新聞の記者にお友達はいたんですか。

:いるわけないじゃないですか(笑)。

小田嶋:ないよな(笑)。

:それで会社に帰ってきたら、F銀行からすごい贈り物が届いていて(笑)。支店長と副支店長が謝りに来て、結局、俺のローンを元に戻して、その差額をお返しします、って話になったんだよ。

小田嶋:ぎりぎりだな。岡のやり口だよ。

:でもそこまで言わない限り、銀行にだけ都合のいい理不尽が通ってしまうわけだよ。つまり、おばあさんとかおじいさんたちは、みんなやられていたと思う。

しかし新聞にそれを出されたら、飛びますね、支店長。

続きを読む 2/5 ポータブル土俵を持ち歩く

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