:ニュースのない広告には価値がないということがはっきりするだけの話なので、僕は逆にいいことだと思うぐらい。だってニュースがないのに散々、広告を作らされてきたんだもの。なぜこんなのを広告するんだろうみたいなことはたくさんあるよ。それを是正することによって俺の年収が減ったとしても、別にいいじゃないかと思うぐらいだよ。

受け手にとっての価値は、ニュース性があるかどうかに尽きる、ということですね。

:まったくそうだと思います。

つまり出す方が金を払っているニュースなのか、受ける方が金を払って取りに行くニュースなのかの違い。

:時にはそうやってクライアントを追い詰めたりしている。追い詰めるっていうと何だけど、真剣に議論する。「この広告のニュースは何なんだ」、と。

小田嶋:あと、別のことにもに気づいたんだけど。新聞社には月産何ラインというのか、読むにたえうる文章を書く能力のある人間が何千人といるわけだったりするでしょう。それが日本中、世界中の支局に散らばっていて、月に3行しか書いていなかったりする。だから生産性としてすごく低いんだけど、しょうがないからというので、社内誌みたいなものを作る。これがものすごい充実しているんだよ。

:面白いの?

新聞記者も「もったいない」

小田嶋:面白いといえば面白いんだけど、とにかくすごいパワーで書かれているわけ。やり場のない執筆パワー。新聞社が開放されると、あれはいったいどこに行くんだろう、と。

:そういう人たちはウェブには書いていないのか?

小田嶋:書いているのかもしれないね。地方紙の新聞記者さんたちはみんな、結構ブログを持っていたりするものね。ということは、彼らはあんなに書く取材をたくさんしていて、しかも見識もあるのに月に4行しか書けない。これは、すごいストレスだぞと。

:隣の犬が逃げた的な取材で1日が終わっちゃったりするわけだ。

小田嶋:○○城の○○博覧会とか、やめてくれ、みたいな記事を書かされているんだよ、現場は。

:話を戻すけど、情報というのは、ものすごくたくさんネット上にあるでしょ。自分でどの情報を見るのかというのが面倒くさくないの? 新聞を取っていれば、その点がとりあえずないでしょう。

小田嶋:それがだからむしろ楽しみというか、メディアリテラシーと言ってはなんだけれども、どこまで本当で、どこまでウソなのかを見極めることが面白いわけ、まあ、俺なんかは行き過ぎているよ。

:すごいな、それ。でも……。

小田嶋:結構だまされているけど。

:俺なんかは、日経と朝日と日刊スポーツを取っているわけ。その3紙を読めばだいたいのことは分かるということに、自分ではなっている。そういうのはどうなの?

岡康道氏と小田嶋隆氏

小田嶋:俺はasahi.comなんかは信用しているわけ。取りあえず、朝日が言っているなら本当だろうと、これをうのみにしておいて、で、「2ちゃんねる」なんかを読んで落差を楽しむというか。2ちゃんの情報というのは絶対警戒してかからならなきゃいけないものね。でも、朝日の情報なんかも今後、2ちゃん化していくんじゃないかという予感はある。ネットの情報のように、どんどん薄まり、汚れていく。

:どうなっちゃうわけ、日本は。

小田嶋:どうなんだろうね。でもマスメディアの高給取りの社員が月に4行しか書かないくせに年収1500万円ももらっているということは、社会正義からすればどんどんリストラしろ、ということになるんだろうけど、それによって、社会が支えられていたりする部分もあったりするわけだから、いちがいにはいえないよね。

次回は「セカンドライフ」を語ろう!

しかし、どこかで1回立ち行かなくなる時を迎えるでしょうね。

小田嶋:明治に戻る必要はないかもしれないけど、本当は新聞って、ある時点まで戻ればインテリだけが読むものだったんだよね。世界を知りたいのはインテリだけだったはずなんですよ。日本人だけかもしれない、普通のおばさんたちが世界情勢を知っていたりするのは。

:普通のおばさんだってニュースは知りたいだろ?

小田嶋:アメリカのおばさんは世界情勢なんて興味もないよ。

メディアの変化は、コミュニケーションを考える時に、避けて通れません。今日は新聞というマスメディアについて話が出ましたので、次回以降はテレビやネットのさまざまな事象についてお話いただこうと思います。

:そうですね。次回でいいけど、セカンドライフをどう見るか、というのも話したいしね。

(妙にまともにつづくのだが…)

(2007年10月5日公開の記事を再掲載しました。)

「人生の諸問題」は4冊の単行本になっています。刊行順に『人生2割がちょうどいい』『ガラパゴスでいいじゃない』『いつだって僕たちは途上にいる』(以上講談社刊)『人生の諸問題 五十路越え』(弊社刊)

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