小田嶋:好きな音楽だとか尊敬しているミュージシャンに対しては。文章を読む人間にも、それは多少はあるはずで、印刷業者や出版社だとかという中間業者が抜けた形であれば、読んだヤツが一人につき10円くれれば、我々は案外暮らせていけたりするんです。

出版社は、逆に言うとそれをやらないとビジネスにならなくなるのかもしれないです。

小田嶋:トーハン、日販もやばいよね。でも、それ以上にやばいのは新聞社。我々はもしかして、新聞社の最後に立ち会わなければならないのかな、と。だって今、20代のやつは、新聞を半分しか取っていないというじゃない。

:本当にそうなのか?

新聞、取ってません(小田嶋)

先日、東大大学院のジャーナリズムコースに話をしに行きました。当然、そこにいる院生たちは、マスコミに興味があったり、行きたかったりする人たちなんですね。ただ、30人いた中で、リアル新聞を取っているのは3人しかいませんでした。

:じゃ、どうやってニュースを知るの? テレビとかウェブ?

彼らは全員、ウェブで全紙は見ているんです。書評欄とかコラムを除く、ほとんどのニュースはそうやってアクセスする。

小田嶋:学芸欄が読めないだけになっているんだ。俺だってもう10年、新聞を取っていないですよ。だから、子供の学校の課題で困るんだよね。持ち物、新聞紙、なんてのがあると。

:お前、取っていないんだ。

小田嶋隆氏

小田嶋:取っていない。俺が新聞を取っていないということをアナウンスすると、新聞社の人がすごく嫌がるんだよね。

:それはそうだろ、「読売ウィークリー」で連載している当の本人が(笑)。でもさ、新聞紙って楽しくない? 朝開くと。

小田嶋:たまに実家に行って、見ると、いいなと思う。あと一覧性があるから便利は便利なんだけどね。

:ニューヨークの友達が言っていたけど、ニューヨークでは今、インターネット上の新聞って、プリントアウトされるのを想定してレイアウトされている。で、みんなそのプリントアウトした紙を持って地下鉄に乗っているんだって。だったら新聞を取ればいいじゃないかと、僕は思うんだけど。

やっぱり新聞のパッケージというものは、読めばよくできているんです。でも、コスト面と情報のスピードがウェブにかなわなくなっています。

小田嶋:その面で、ニュースがウェブに移行するのはよく分かるんだけど、僕にとっては、新聞記者というやつらがいなくなる、という事態がとても困ると思われる。新聞社がつぶれるのは一向に構わないんだけど、記者だけ生きていてくれないと困るわけです。

:それはどういうことなのか。

小田嶋:ウェブの中で出ているうわさ話だとか、事実っぽい何とかは、大体ウソばっかりなんだよ、結局。そういうウソ情報に対して、ネットにいる連中は「ソースを出せ、ソースを出せ」と反撃するんだけど、そんな連中が信用するソースは、新聞だけなんだよね。

:ネットというソースは信用していないのか?

小田嶋:連中はマスコミのことをすごく嫌っているくせに、マスメディア発の情報しか信じない。というのは結局、裏を取っている1次情報以外、価値がないということなんだよね。記者が自分の目で見て書いた記事には、一応の価値を認めるけれど、どこかの週刊誌に載ったぞとか、どこかのウェブに書いてあったそ、とかいう引用情報は、やっぱり認めない。で、信用できる情報の場合、ソースをつきつめていくと、実は新聞以外にないんですね。

:じゃあ、皮肉な話だけど、「2ちゃんねる」の人たちほど、まじめに新聞を読んでいる人たちはいないのか。

一番困るのは2ちゃんねらー?

小田嶋:だから、これで新聞社がつぶれて記者がいなくなっちゃったら、いったいどうなるのか、と思うよね。もともと、新聞記者はとんでもない資産と資金とソースを使って取材しているんだよ。だって個人の企画でイラクに戦争取材には行けないでしょう。でも新聞社は、既得権も含めて、そういうリソースを持っていて、戦争現場の取材でも、そこに何人も投入できる。

:インフラがあるわけだ。

小田嶋:地震が起きるかもしれないけれど、普段は何も事件が起こらない南米支局あたりにも人間がいるわけだ。そういう人員をずっと飼っていけるのは、実は我々が紙の新聞を購読しているからなんだけど、その状況がなくなっちゃうと、どうなるのかな。

:それは広告界にもつながるな。新聞がなくなったら新聞広告がなくなることだものね。ウェブの広告というのは今のところ、まずあんまりお金にならない。それからニューヨークタイムズのような形式を取るとしたら、新聞広告は下の1段になっちゃうでしょう。15段の広告を出しても、みんなそこをプリントアウトはしてくれないもの。

小田嶋:困るか?

:そこなんだけど、僕は最終的には困らない。だって、新聞広告であろうが、新聞の記事であろうが、どっちもニュースがあって面白ければ人は読むんだよね。

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