:最悪。若手はね、期待を背負って起用されて、10試合ヒットがなかったら、悔しくて、情けなくて泣きますよね。そういう感情の動きも含めて、プロとして鍛えられていくんだし、そういう選手が苦しみながらも野球に立ち向かっていく姿に、ファンは心を打たれる。

 ファンは、勝ちだけを求めているんじゃないですよ。それをさ、ピークを過ぎたベテランが起用されて、シーズンの4の1とかやってもさ、ふざけるな、という話ですよね。いや、仁志はいい選手ですけど。

勝てないときのチーム運営というのは、ビジネスピープルにも通じる課題ですね。

高木:勝てないときの方が得るものは大きいんです。勝っているときというのは、やっぱり慢心して、足元が見えなくなります。次につながる有効な批評を受けても、勝ったんだったらいいだろう、みたいな流し方をしてしまう。だから何かを得るには、負けた方がいいんですよ。野村さんみたいにミーティングを開いて、負けを負けのままにしないで掘り下げる。そうすると、勝つための道筋が生まれる。

野村監督のぼやきだけは、見ないと眠れない

ビジネス本、1冊できますね。

:だって今、プロ野球で一番面白いのは、野村さんのぼやきだもんね。横浜の戦果云々よりも、あれ、見ずには眠れないですよ。

 この間は、マー君(田中将大)が8回で出たときに、「肩が痛いだのへちまだのと言いやがって」とか、ひどいことを言っていた。普通、監督があんなこと言わないよね。でも、こっちはそれで、マー君のことが身近になる。あいつ、そんなこと言っていたのか、しょうがないな~って(笑)。

高木:野村さんは野球も面白いです。彼は奇襲をかけますしね。弱いチームは奇襲を用いなきゃ、強いチームには勝てないんです。だからよく見ていると、采配一つ一つが勉強にもなりますね。

:ランナー1塁、3塁のときに、ディレードスチールみたいにして、1塁がわざと挟まれることもやっていたよね。1塁側に相手を引いておいて、3塁ランナーをホームベースに突っ込ませる。高校野球では見るけど、おい、これ、プロでもやるのか、って驚いた。

そういうことは、そもそも可能なのですか。

:可能です。

高木:可能、可能。

うーん。こういう解説だったら、プロ野球門外漢でもテレビ中継を見たくなるかも。

高木:僕だって、解説席でこのぐらいすっきりとしゃべれたら幸せですよ。ただ、そうしたらね、たぶん街を歩けなくなる(笑)。

高木さんはテレビで解説を務めるときに、もしかして将来監督になるからな、というような感じも頭に入れていたりしますか。

:当然、前提としてあるでしょう(笑)。

高木:だから、ちょっと言えない部分もあるんです。言っちゃおうかな、って思うんですけど(笑)。

:それがプロ野球を面白くなくしているんですよ。だけど、じゃあ、監督のポジションはあきらめたから、思い切ったことを言って面白くしちゃおう、と、そうなったら今度は球団からプレッシャーがかかって、解説の仕事すらなくなっちゃう。僕は高木の解説を聞いて、何であんなに当たり障りのないことを言っているのか、って、わりと批判的に高木に伝えてきたんだけど、あれ以上は言えない、という事情も少しは分かる。

高木:あのくらいでも、球団からは「高木さんの解説、今日はきつかったね」とは言われます。まあ、だから、言ってもいいけど、フォローはしておかなきゃいけないんです。

批評なきところに変化はない

批評が利いていない業界なんですね。

:うん、批評が利いていない業界。

それはプロ野球界だけの話でなく、日本社会全体の問題につながるように思えます。

高木:だから、この体質は絶対、変えていかなきゃいけない。

:的を射た批評がなくなれば、その世界は凋落あるのみ、だよ。

高木:本当、そうですよ。だめなものはだめ、って、はっきり言えるようにならないと。

突破口はありますか。

高木:突破口は今のところは、まったく見えない状態ではありますけどね。

:いや、高木豊が横浜の監督になって、どんな批評でも受ける、と言ってやるのが突破口のひとつの可能性じゃないかな。その場合は、3年ぐらいの契約を、球団がちゃんと交わしてもらいたい。1年契約では、何も前進しないから。

高木:1年ということはないと思うんだけど、ただ、2年じゃ何もできないです。石の上にも3年、というぐらい、ものを変えていくのに3年はかかりますよね。

人生2割でもいいけれど、勝つには3年は必要だ、と。

(写真/大槻 純一)

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