高木:横浜(ベイスターズ)にだって、将来に向かってどういうビジョンを持っているんだ、と聞きたいですよ。松本(啓二朗)を開幕で2試合使って、2試合打てなかったらもう引っ込めて、今では名前すら出てこなくなった。ベンチはどういう目をしているんだ、ということですよ。
岡:それって、松本をどう育てていきたいか、ということだよね。そういうビジョンが一人一人の選手に注がれるべきだよ。だって横浜でいえば、石川(雄洋)は何とか育っているけど、今度はセカンドに仁志(敏久)をまた出してきて、そうしたら藤田(一也)はどうなっちゃうんだ、と。

高木:今の横浜はどうあがいても、いい成績なんて収められないですから、若返りを図って強くする、というビジョンを描くんだったら、今の時期は我慢して、文句があるんだったら、3年後に言ってくれ、ぐらいの腹の据え方が必要なんです。
岡:大丈夫か、それ、そこまで言って。
高木:あんまり書かないでいただけると(笑)。
岡:いや、言っておくべきだ。
数字の「勝利」を要求するのは誰か
高木:でも本当に、今は苦しい成長過程なんだ、でも3年後にこのチームが、この選手が、どうなっているかを楽しみにしてくれ、という野球を横浜にはやってもらいたいです。
どうしてお客さんが喜ぶ野球より、つまらない勝てる野球というのを志向するようになったのでしょうか。
高木:勝つことを要求するからでしょう。
どなたが、ですか?
高木:やっぱり体裁があるじゃないですか。弱小チームを持っているオーナーよりは、強いチームを持っているオーナーの方が、明らかに鼻が高いわけです。
それはそうでしょうね。
高木:でも、そもそも、そこがおかしい。
アメリカの大リーグはどうなのでしょうか。
高木:アメリカも似たりよったりですよ。ただしアメリカは、放映権収入とか、金の配分とか、ビジネスの土台と枠組みがしっかりしていて、基本的に違うわけです。対して日本は、赤字ばかりで運営が難しい球団がたくさんある。ビジネスとして成り立っていない上に、プロ野球というものが乗っかっている。それで激励会とかでは、「プロの誇りをかけて、優勝目指して頑張りましょう」なんて言う。うそをつけ、と(笑)。

岡:それ以前に、何億円使っているんだ、という話だよね(笑)。
高木:だからファンにきちんと言えばいいんですよ。今年は優勝は無理です、だけど3年後に期待してください、その過程を応援してください、と。みんなが見ることによって緊張感は増すだろうし、その中で選手も成長しなきゃいかんと思うでしょう。そこを応援してもらって、3年後に一緒に喜びましょう、と。そのぐらいの気の利いたことを言ってもいいですよ。
岡:どこを目標地点に定めるかで、選手の起用の方法や采配は、全然違ってくるよね。
今現在、岡さんは年季の入った横浜ファンとして、納得していないんですね。
岡:そりゃ、していません。
高木:でも、僕のようなコメントを球団側から聞いたら納得するでしょう。
岡:そうだね。
今の高木さんの檄は、ファンじゃなくても納得します。
弱くていいわけはないけど
岡:弱くていいってことは、もちろんないわけです。だけど、負ける筋の通し方というのはある。別に野球だけじゃなく、僕たちだって競合プレゼンで負けたりは頻繁にある。だから、どう負けたかの方が大事だったりするんだよね。
横浜でいえば、松本に代表される、若くて、何年か後には中心になるかもしれない素質を持った選手がいるわけです。そういう若手を育てながら成果も上げていくのと、ああでもない、こうでもないと、若手もベテランも出しては引っ込めて、を繰り返して、結局負けちゃった、というのでは雲泥の差だよ。
それは会社に置き換えても最悪ですね。
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