小田嶋:俺もこんなこと書いたんだ、って今、思い出した。

岡:だから自分自身の長所を言うと、まあ、いつでも何となく自信があるところですよね、根拠はないんだけど。
小田嶋:こいつの長所を言え、と言われて、じゃあ、しょうがない、話しましょうか、ということで言うんであれば、こいつは確かにいつも冷静なわけじゃない。
岡:何なんだよ。
小田嶋:いつでも冷静じゃないけれど、ただ、そこのタイミングはうまい。興奮すべきじゃないところで興奮したり、冷静であるべきときに冷静じゃない、というのが、感情で動く人間というやつの困ったところなんだけど、こいつは、大切なところで冷静だから、それが偉いと思って。だって感情って、たいていがまずいときに動いているものだから。
岡:それはうれしいね、そうだとすれば。
小田嶋:ここ一番とか、一番慌てなきゃ、とかいうところで冷静でいられるのは、なかなかすごいことだよね。まあ、こいつは、つまらないところで興奮していたりするけど。
岡:いや、俺にとってはそれがポイントかもしれない。
岡さんが見る小田嶋さんの長所はどういうところですか。
岡:うーん、そうですね、これは難しいね。うーん、うーん。
出てこない、と。
不得意なものごとほど努力してしまう(そして結果も出ない)
岡:1人の人間の中には、長い時間にわたって、いろいろな種類の情報が入っていくわけですよね。それで、それを通過して出て行くものが、話すことや書くことになっていくわけだけど、そういう容れ物として小田嶋は特殊なものだ、というんですかね。似たような容れ物がほかにない、というか。僕と小田嶋は若いころの何年間か、同じ情報を受けていたわけだけど、そこから出てくるものは、小田嶋の方が面白いよね。そして、そういうのは生まれつきのもので、努力ではないんだと思う。そういうものを才能と言うんだとも思いますね。
長所というよりは才能ということですか。
岡:まあ才能が長所で十分じゃないですか。

小田嶋:努力はしているんだけどね。
岡:してないでしょう。
小田嶋:いや。
岡:してるの?
小田嶋:うん、その部分でしてないけど、違うところでしてる。
岡:どういうところで?
小田嶋:だから結局、報われないことにしていますよ。人って不得意なところを努力しちゃうものじゃない?
岡:そうなんだよ。
小田嶋:得意分野って努力しないんだよ。
情熱と時間は何も保証しない。でも、やらないのもつまらない
岡:そうそう、だから飯を食っている部分ではたいした努力もしてないでしょう。
小田嶋:そうそう、そういうこと、そういうこと。
岡:俺は本当に40年ぐらい、スポーツには努力に努力を重ねてきているんだけど、まったく報われてない。
小田嶋:そうなんだよ。その意味でいえば、俺の場合は音楽に一番情熱とお金とを注いだけどね。
岡:それと時間とね。
小田嶋:情熱とお金と時間を費やしたけど、才能が全然なかった、と。そういうことを今、生きている中で感じています。

(ご好評いただきました「人生の諸問題」、まさかの書籍化を記念しての第2シーズンは今回で終了いたします。再開まで、どうぞのんびりとお待ちください:編集Y)
(次シーズンは「格調」をテーマに進めていきたいと念じています:清野)
(写真/大槻 純一)
記事掲載当初、本文中で「電気はぜーんぶ、つけちゃう」「電気は全部つけちゃって」としていましたが、正しくは「電気はぜーんぶ、点けちゃう」「電気は全部点けちゃって」です。「今日今回は」「2人は回答は」としていましたが、正しくは「今回は」「2人の回答は」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2009/09/11 20:10]

「オカ、大丈夫か……!?」
「オダジマ、終わったな……。」
停学、父破産、就職、転職、失業、起業、結婚、離婚、子育て、アル中、禁煙、……。
クラスメートだった名CMプランナーと名コラムニストはそれぞれの『人生の諸問題』にどう対処したのか、あるいは対処できなかったのか。
一生懸命になるな。無駄な努力は、かえって危険。
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