本記事は2009年9月11日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

(日経ビジネス電子版編集部)

承前

:思い出したよ。僕、36とか37歳のときに、部下から「ちょっといいですか」って言われたことがあったんだよ。「岡さん、頭頂部が、やばいですよ」って。

一同:えーっ?

:えーっ? でしょう。それは自己イメージにもないし、とにかくあり得ない、と思って、鏡をこう、いくつか組み合わせて、頭頂部を見てみたわけ。すると確実にこれ、ザビエル型になっている、と。

小田嶋:本当?

:それで、これはまずい、ということで、その日からジムに行くようにしたんですよ。それでものすごく体を鍛えたら、半年もたたないうちに……

復活したんですか?

体を鍛えれば、毛根も強くなる!?

クリエイティブディレクター 岡 康道氏 (写真:大槻 純一、以下同)

:髪の毛が復活した。でも本気でやらなきゃだめなんですよ。

何を本気で?

:だから、本気で体を鍛えなければならない。

小田嶋:どういう因果関係があるのか知らないけれど、そんなにすごいことをしたのか?

:僕は28歳から36歳まではただただサラリーマンをやっていて、何の運動もしてなかったわけ。で、その部下に言われたときから突如、全身の肉体改造にまい進することになった。でも、そうしたら本当にあっという間よ。

小田嶋:ともかくザビエル型だった、というのは、にわかには信じられない。

ちょっと使用前、使用後をCGで合成してみましょうか。

:やめてよ。でも、言っておくけど、並々ならぬトレーニングが必要ですよ。例えば腹筋を100回やっても疲れないんだったら、1000回やる、とか。そうすると腹筋だけで1時間ぐらいかかっちゃうわけ。

小田嶋:異常だな。

:普通ではやれないことをするんだよ。だいたい1000回なんて、できっこないんだけど、やっていくうちに1000回できるときがくるのよ。そうすると今度、これ、いつやめていいか分からなくなっちゃう(笑)。つまり、やっているうちに回復できちゃうわけ、最初のころの疲労を。

うそ。

:本当ですよ。要は、そこまでいくか、ということなんですよ。

それは「TUGBOAT」をしのぐ起業ができるかもしれません。

小田嶋:「髪は気力で生やせ」って、本でもベストセラーを狙えるね。

ファッション中枢に問題あり

:それで髪も確かに大事なんだけど、俺たちより下のやつらは、眉にも気を使うようになったでしょう。僕は「POPEYE」創刊もショックだったけど、「MEN'S NON-NO」の創刊というのはもっとショッキングで、それ以前に男は眉とかは、いじれなかったと思う。驚いたよ、あれは、本当に。

コラムニスト 小田嶋隆氏

小田嶋:俺なんかは、おしゃれというのは旧体制の象徴だって気分が高校生ぐらいまでは、まだ周りにあったの。

:そうだね。でも、大学へ入ったらちょっと違っていたね。

小田嶋:大学に入って、これはちょっとおしゃれをしないとまずいぞ、ということを思ったんだけど。

きっかけは何だったんですか。

小田嶋:ちょっと女の子に格好がつかないんじゃないだろうか、って。

それですか。

続きを読む 2/4 日本の中年、スーツしか着地点なし

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