:しかも骨が肺の方に刺さって、出血していたんだ。その人は大きな病院で事務をやっているんだけど、まさかこんなことで休めない、と。バレては大変だ、というので、肋骨が折れて肺の方に刺さっているというのに、ほかの病院にかかって、ふらふらになって治しているよ。もう1人のやつは、これは自営業なんだけど、タックルしたわけじゃなくて、相手方の若い選手にカットを切られて、そのまま横に倒れて肩を脱臼。

小田嶋:もう、それ、運動選手じゃないよね(笑)。ぶつかってもいないのに脱臼したり、アキレス腱を切ったり、というのは、そういうところに出て行ったおじさんが、一番にやりそうな感じだよ。だいたい、プロテクターは着けないの?

:昭和の選手たちは、ああいうものは少ない方が勇気がある、というばかげたな文学的な雰囲気をまだ持っちゃっているわけ。僕は腎臓が破裂したことがあるから、当然、十分なプロテクターはしていたんだけど(このあたりは「O氏の電通入社試験突破作戦」を)。

納得いかない、そして歳も認めたくない。またやるぞ

岡さんは無傷だったんですか。

:僕はボールをちゃんとつかまえていないわけだから、けがもしないわけですよ。だから僕は個人的には非常に納得がいっていない、というか、俺、何のためにこの1年半やっていたんだ、という。

チームが勝っても満たされなかったですか?

:いや、そんなことはないですよ。キャプテンだから、もちろん勝てばそれでいいんだけど、選手としてはやっぱり納得はいっていないということですね。

小田嶋:懲りずにまた次をやる、と言い出すところがこいつなわけだよ。

客観的な年齢と、自分の中での年齢との間にギャップがあるのでしょうね。

:(むっ)。でも、まあ、それは多いにあるかもしれない。日本人って、何かといえば、「おいくつですか?」とか聞いてくるでしょう。それで「53歳です」とか答えているうちに、だんだん、あ、俺、53歳だな、って思えてくるのは、何だか認めたくない。

小田嶋:俺は45歳ぐらいのときに、自分の歳を1年ほど多く間違えていたから。

:それはアル中だったころだよね。

小田嶋:いや、もう治ってたと思うんだけど。あ、直りかけのころかな。

そのあたりから、すでにもうあやふやで。

小田嶋:とにかく、ずっと公式に年齢を1つ多く言っていたの。で、あるとき、編集の人が、「あれ、小田嶋さん、ちょっと合わないじゃないですか?」って言ってきて、計算してみたら、「あ、そうか」って。

小田嶋さんは、自分の本のタイトルだって正式には分かっておられないですから。

:だから年齢という概念がなくなったら、いつ死んでいいか分からなくなって、結構長く生きちゃったりするんじゃないかな。

小田嶋:どうかな。生きるかどうかは分からないけどね。

鏡よ、鏡、わたしはいくつ?

:分からないけどさ、ただ、「おまえはいくつだ?」って、周囲から言われ続けることで、年齢が規定されていくというのはあると思う。

 あとさ、俺は鏡だと思うね。朝、ひげを剃るときに鏡を見て、「あ、俺はおじさんなんだ」って確認するじゃない? もし鏡というものがなかったら、「あれ、俺は何だったっけ?」というふうに、またなっちゃうんだから。

小田嶋:夢を見ると驚くべきことに高校生だったりすることがあるね。自分がおじさんであるような設定で夢なんか見てないよ。

:高校生かどうか分からないけど、夢の中では、とても若者だよね。それで、起き抜けの顔だよね、やっぱり。起き抜けで、頭がぼさぼさになった自分の顔、あれはショックだよね。見ないようにしているもんね。

起き抜けの顔がひどいのは、30代の人でもそうなんじゃないでしょうか?

:ひどいかどうかじゃないんだよ。今、問題にしているのは、老いているかどうか、ということなんだ。

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