岡:そうだよ。息子たちが「宿題がある」と言い訳すると、「宿題は先生との約束。約束を破ることはいけない。だから最初から『僕はサッカーに打ち込んでいるので宿題はできません』と、はっきり説明してこい」と、こう言っているんでしょう。
高木:だって親は「約束を破るな」とまず教えている。それを了承したんだったら、約束を破らない行動を取れ、と。サッカーの練習に行って、帰ってきて、疲れてできないんだったら、「僕はできません」と、あらかじめ先生に伝えておいた方が、後ろめたさはないじゃないですか。
何も持っていない息子に、期待をしてもいいですか
お母さんは、何とおっしゃっていますか。
高木:だから男の子はおやじが育てろ、という話なわけで・・・・・・(笑)。
サッカーをやっていて、途中から野球に転向というのはあり得るんですか。
高木:例えばうちの子でも、サッカーをやりながらベンチにずっと座っているようだったら、おそらく野球をやってみるか、と声を掛けたと思うんです。サッカーに向かない子がずっとサッカーをやる必要はないし、野球に向かない子が、野球をずっとやっている必要もないし。人間って何か必ず持っていますよ。それを見つけ出してやるのが親の務めだと思うんだよね。
岡:でも、何も持ってない場合もあると思うんだよ(笑)。というか、実はそっちの方が多いと思うんですよ。
それはその通りです。
岡:僕なんかもすごい運動が好きで、努力もしたけど、とにかく才能がないから、何者にもならないわけです。ただ、モノにはなってないけれども、ずっと野球が好きで、アメフトも好きで、そういうのを見たり、やったりしているのが一番好き、というふうにかかわることはできるよ、と言ってあげたいんだよね、むしろ。
高木:いやいや、岡さんにしたって、なるべくしてちゃんと今の地位になっているんですよ。
岡:だけど、子供に何か光るものがある、というのは勝者の論理。そんな人は100人に1人だよ。でも、別に光らなくたって、人生いいんじゃないか、というのが、僕の胸にはある。だって、光るものがある、と思って子供を見たら、子供は苦しいですよ。高木が言っている方が立派な話だと思うし、聞いた人は感動するかもしれないけど。
「人生2割がちょうどいい」というテーゼよりも、さらに、うのみにしてはいけない。
岡:いけない、いけない。そんな子供はめったにいないんだから。逆に何も光るものがないほとんどの子供たちに対して、親が光るものは何かと見つめていくことは、これはもう虐待だと思うよ。だから、子供はもう、生きていればいい、というぐらいで育てた方がいいんじゃないか。
高木:でも、僕は、育て方もあると思います。
どうでしょう。
凡庸な人生に価値はあるか



高木:それは、光るものはないかも分からない。分からないけど、やっぱり育て方によって、違ったものが出てくるはずですよ。例えばひとりの子供が成長しましたと。その子をまた赤ちゃんのときから育てようとしたら、親って同じ育て方をしないですよね。失敗を学んで、そこは変えようとする。そうしたら何かが出てくるんじゃないかと、僕は期待するよ。
岡:だけど、そうだとすると、男の子に限って言っても、必ず長男より二男が、二男より三男が優秀になるはずなんですよ、運動でも勉強でも。でも、そんなわけないじゃない? この辺の議論は例証できないから何とも言えないんだけど、別に何も光るものがない、凡庸な一生だとしても、それでも十分価値があるんだ、というまなざしが一方で必要なんじゃないかな。というか、教育というのは、むしろそっちの方が大きいんだからさ。
内田樹先生と小田嶋さんの対談(「2割」で戦えば、8割の「負けしろ」が使える)は、まさしくそのように展開していきましたね。
白熱の会話は後編に続きます。
(写真/大槻 純一)

「オカ、大丈夫か……!?」
「オダジマ、終わったな……。」
停学、父破産、就職、転職、失業、起業、結婚、離婚、子育て、アル中、禁煙、……。
クラスメートだった名CMプランナーと名コラムニストはそれぞれの『人生の諸問題』にどう対処したのか、あるいは対処できなかったのか。
一生懸命になるな。無駄な努力は、かえって危険。
不運だってネタにしてしまえば乗り越えられる。
いろいろあるけど、「人生2割」でやっていければちょうどいい。
凹みがちなこの時代に贈る
「頭のいいひと同士の、とってもおバカな、でも本当のお話」。
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記事掲載当初、本文中で「年棒」としていましたが、正しくは「年俸」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2009/07/17 9:45]
(「人生の諸問題 令和リターンズ」はこちら 再公開記事のリストはこちらの記事の最後のページにございます)
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