高木:あのとき、ゴールデングラブ賞の発表が3時だったんですよ。「高木さん、もう間違いないから、コメントをください」と、マスコミが言うから、「万が一取れなかった場合、もうこの賞は二度といらない、というふうに書いて結構です」と言ったんですよね。まさか、僕も取れないとは思っていなかったから。で、「光栄です」の裏返しみたいな意味で言ったのに、あ、そのまんま出ちゃったよ、みたいになって(笑)。
岡:「二度といらない、と言った」と新聞に出たんだよね(笑)。それで本当に、もう二度と選ばれなくなった。うかつだったよね。

高木:口は災いの元という意味がそのときに分かりました(笑)。
岡:だから高木は、目立つ存在ではあったよ。
高木:ただ、野球をするにおいては、やっぱり4番というのが、打者としてはあくまでもど真ん中、主役という感じですよ。でも、チームにおいては、またちょっと違いますけどね。選手じゃなくて、人間の集団になったときに、じゃあ、誰がリーダーなんだ、と。
長嶋さん曰く「サバって魚偏にブルーだったよね」
その、人間の集団になったときの、高木さんのポジションはどこだったのですか。
高木:それはやっぱり中心でしょう(笑)。
岡:キャプテンだったからね。
高木:「人生2割~」の本に、「リーダーとは、ああいう人になりたい、と思わせる力以外にない」と、書いてありましたが、すごく共感しましたね。その通りなんですよ。僕からしても、リーダーってあこがれなんだ、と。
だからこそ、その人が発する言葉に対して、「そうなんだ」と素直に受け入れられる。逆に、俺はリーダーなんだから付いて来い、というやつに限って誰も付いていかない(笑)。
高木さんにとって具体的なリーダー像とは、例えばどなたですか。
高木:僕がプロ野球に入ったときは、長嶋さん、王さんはすでに引退されていましたけど、現役プレーヤーよりもはるかにオーラを感じましたね。
岡:やっぱり王、長嶋なんだね。
どんなところが。
高木:長嶋さんって、あの人、伝説が多いでしょう。日本シリーズの第1戦のときに、後楽園球場で空を見ていたらしいんです。で、いきなり記者たちの方に振り向いて、「サバって魚偏にブルーだったよね」って・・・・・・(笑)。
岡:それそれ、聞いたことあるよ(笑)。
高木:この人は一体、何を考えているのか、と。普通じゃできないですよ。
岡さんも長嶋さんとコマーシャルを作られたことがありますよね。
岡:全日空のコマーシャルで1回、長嶋さんに出ていただいたことがある。僕らがあこがれる大人というテーマで。
そのときも確かに面白かったんだよ。テレビ用の撮影が終わって、次にグラフィックの撮影になったとき、ジャケットからスーツへ、ちょっと着替えが必要だったんだけど、上半身だけの撮影だから、ズボンは替えなくていい、ということになったの。で、カメラマンが、「ズボンはいいので、このままでいきます」と振ったら、長嶋さんは「あ、そう」と、その場でズボンを脱ぎ始めちゃった。
いやいや、そういう意味じゃなくて、という話だよ。だって、いくら上半身だけの撮影だといっても、上がスーツで、下がズボンなし、なんて変な格好すぎるでしょう。
高木:面白いよね。

岡:全然気にしないの。でも、空港を歩いているだけのシーンなんだけど、ものすごくかっこよかった。
高木:かっこいいでしょう。
岡:驚いちゃうよね、歩いているだけなのに。
タイトルは僕が付けました
高木:それで、7月に僕も本を出すんです。教育論なんだけど。
タイトルは?
高木:「おやじ次第」って(笑)。
岡:いや、「父親次第」だよ。
高木:あ、「父親次第」。
岡:って、僕が付けたんだけど。いいタイトルだよ。間違えるなよ。
高木さんは3人の息子さんがおられて、みなサッカーに打ち込んで、日本一になられています。そんな息子さんに対して、「中途半端にするぐらいなら勉強はするな。勉強する時間があるなら、それをサッカーに費やせ」と、おっしゃっているそうですね。
高木:そうですね。
いや、よく言えますね。
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