岡:そうです。僕らは昭和31年に生まれているんだけど、物心がついたときに、大洋、大洋、大洋、と世間が言っていたはずなんだ。
じゃあ、そこでインプリンティング(刷り込み)がなされたんですね。
岡:その可能性は高いな。
でも、だとしたら同世代に大洋ファンがたくさんいてもいいはずですね。
岡:それがいないんだけど(笑)。でも、何か野球と大洋というのがくっ付いて頭に入ったんじゃないかな、という気はするな。
何だか、うなずけます。
小田嶋:いや、うなずけない。こいつのは、もっとわけの分からない情熱だよ。だって俺たちの高校のころに、TVK(テレビ神奈川)というUHF局が開局しただろう。あのとき、お前はアンテナを立てなかった?

岡:立ててた。
小田嶋:だろう。
岡:それは立てるよ。だってTVKが見たいから。
小田嶋:UHFのアンテナを立てているって、よっぽどのやつだよ。しかも神奈川の方から電波が来るというあれでしょう。豊島区には来ないよ。
岡:そこを何とかして、無理にでも、って立てていたな。
小田嶋:こいつんちに行くと見せられるんだけど、TVKの放送というのは、ジョン・シピンとか、全部フルネームで言ってたね。ただのシピンじゃないんだよ、ジョン・シピンって。
どんなに尽くしても報われない
小田嶋さんもよく覚えておられますね。
小田嶋:ああ、こんなものを見るためにアンテナを立ててるのかって、びっくりしたから。
岡:本当、不思議だよね。そこまで情熱を注いでも、僕に何も、もたらしてはくれないんだけど。
小田嶋さんはどこのファンなんですか。
小田嶋:子供のころは阪神ファンだったんだけれども、やめちゃったんだよな。あんまり負けるので、耐えられなくて。
岡:中日ファンのときもあったでしょう。
小田嶋:中日を応援していることもあった。いろいろだよ。しかし、巨人ファンも、昔と比べてずいぶん変わってきたよね。
岡:昔と今はちょっと意味が違うよね。
小田嶋:野球ファンってもの自体が、そろそろおっさんしかいなくなったということを、すごく強く感じる今日このごろですね。
いや、ここでまとめないでほしいんですけど。
小田嶋:それにしたって、横浜は球団が変だよね。
岡:うん。こんなに弱くなってしまった一番の原因は、ドラフトのスカウティングの失敗なんだと思うんだよね。どう失敗したのかというと、とにかく安く上げている。特にこの5年ぐらい、横浜というのは本当に金を掛けないでいるのね。それで結局、この体たらくというか、補強されないから当然、弱いわけです。
小田嶋:そもそも大矢を監督続投にしたのも、金を掛けたくなかったからでしょう。
岡:まあ、そうだよね。
最初に権利行使した「Tの悲劇」
小田嶋:それでいながら、今年のシーズン中に、というタイミングがよく分からないよね。
岡:よく分からないでしょう。ただ、じゃあ、大矢は素晴らしい監督だったか、というと、そうとも言えない、というところもあるわけです。
小田嶋:野球の話になると熱くなるね。今、姿勢まで変わったよ。
岡さんのお友だちのT氏が後任に就くという可能性はあるんですか(「O氏の電通入社試験突破作戦」)。
岡:T氏ね。確かに、誰かがTと言い出せば、それを反対する理由ってあんまりないと思うんです。アテネ五輪日本代表のコーチで、銅メダルも取ったし。ただ、Tの最大の問題は、チームで初めて年俸調停に持ち込んだ選手だってことなんだよね。
小田嶋:あれは、球団のメンツを傷付けた、みたいに内部で思われたんだろうね。
岡:そう。本当はちっともそうじゃないのに、自分のチームのブランドを傷付けた、というふうに見られてしまったんですね。年俸調停というのは、選手側に正式に認められた権利だったから、行使したっていいはずなんだけど、最初に権利を行使する人間を、日本人は褒めないメンタリティじゃないですか。
その年俸調停というのは何ですか。
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