本記事は2009年7月10日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

(日経ビジネス電子版編集部)

2009年もすでに半分が過ぎました。いきなりですが、上半期で最もハラが立ったニュースは何だったでしょうか。

:横浜ベイスターズ相川(亮二)捕手の、ヤクルトへの移籍です。

小田嶋:って、ちょっと古い。

:ああ、古いね。

小田嶋:ベイスターズはその後、大矢監督が解任になったよね。

大矢監督という方は、解任されても仕方ない方なんですか。

クリエイティブディレクター 岡 康道氏 (写真:大槻 純一、以下同)

:仕方ないですね。

小田嶋:岡みたいな古い横浜ファン、つまり大洋ファン的には関係ない人だもんね。

:まあ、大矢はもともとヤクルトの選手だったわけだから、1つはそれがあるよね。なぜ大矢が、というのが最初にあって、選手起用も腑に落ちないところが多々あった。で、もっと納得がいかないのは、球団の処置なんだけど。去年だって同じ状況だったんですよ。それなのに球団は9月ぐらいにいち早く、来季も大矢監督で契約する、という発表をしたんだよ。結局47も負けの方が多かったんだね。それなのに、9月の時点でもう来季の継投を発表したから。

小田嶋:替えるんだったら去年、というか、今年の4月から替えるべきだよね。

:そういう状況があったでしょう。仕方ないな、じゃあ、大矢でいくんだな、とファンが思ったら、今度は勝ち負けの差が10になったの時点で、やっぱりこれはヤメた、という。一体どういうつもりなんだ、というのがありますよね。

小田嶋:岡がね、珍しく真面目になるのがこの辺の話なの。ほかはあんまり真面目に語るのを聞いたことがないけど、野球、アメフトの話になると、笑いなしの大マジになるんだよ、これが。

「負け方に一本筋が通る」ものなのか?

岡さんは、なぜ横浜ベイスターズが好きなんですか。

:それはね、まったく分からないんだけど。

分からないのですね。

:でも、子供時代から、巨人、長嶋、王とか、タイガースとかをよしとしない、ひねくれた感じが自分のどこかにあったんだと思う。

小田嶋:俺ね、昔、お前が言っていたことを、ファンというのは麗しいものだね、というコラムのネタにしたことがあるよ。

:イヤな感じだな。

小田嶋:森(祇晶)が監督をやっていたころなんだけど、そのときも当然、弱かったわけ。もちろん、ぼろぼろに負けていたんだけど、岡が言うには「いや、負け方に一本筋が通ってきた」、と。ファンとは、いじらしいもんだと思ったね。

:ファンというのはそういうもんです。

コラムニスト 小田嶋隆氏

小田嶋:大洋ホエールズ、横浜ベイスターズ、みたいなところのファンを30年、40年やっているというのは、負けても負け方に筋まで見出して。

:40年どころか、45年ぐらいは自覚的にファンをやっているわけですよ。自分の小さいころの写真を見ても、最初からWマークの帽子をかぶっているのよ。大洋ホエールズの帽子だよ。

小田嶋:だってさ、普通に野球を見ていた場合、秋山(登)、土井(淳)のバッテリーと聞いても、全然、分からない。俺なんかは記憶がまだ混濁しているところだよ。だから俺と同世代が知っているわけないって話だよ、普通は。なのに、どうしてお前は知っているんだ? というぐらい、小さいころから岡は覚えているんだよね。

:全然覚えている。

バルチック艦隊見ゆ

それはリアルタイムで見て、記憶した、ということなのですか。

:そんなに中継をやってなかった時代だから、見ている数は少ないと思うんだけど。ただ、小学校3~4年生のころから親に頼んで、スポーツ新聞を取っていたんですよ。当時、僕はサンケイスポーツを取っていたんだけど、それをものすごく読んでいました。スポーツ新聞を細かく読んで記憶して、それで、たまに実戦を見ると、とにかく強烈で、そのときのことは忘れない。

小田嶋:巨人戦が大洋に当たるタイミングを待っているって感じでしょう。

:叔父さんか誰かと、神宮球場に行ったんだけど、そのときは金田(正一)が投げていたんだよね。

小田嶋:金田。

:うん、国鉄。

小田嶋:それはね、バルチック艦隊を見ているのと変わらないよ(笑)。

:巨人に行く前の金田ですからね。

小田嶋:わしはバルチック艦隊を見た、という、じいさんの話だな。あるいは、グレン・ミラーを生で聞いた、とか、そういう話だよね。

:確か35年だったと思うんだけど、大洋ホエールズが優勝しているんだよ。

昭和35年ですか。

続きを読む 2/4 どんなに尽くしても報われない

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