小田嶋:天才だよ。あれだけ複雑な政治状況を、「郵政民営化」というワンフレーズで、右と左、賛成と反対、えっ、どっちなの、さあさあさあ、みたいな話に持っていっちゃってさ。あれでみんな、引っ掛かっちゃったわけだから。

小田嶋さんも引っ掛かった口ですか。

小田嶋:俺もその口でしたからね。小泉って、俺、信用はしていないけど、やっぱり好きなんだよね。

へえ~。

小田嶋:おそらくあの人の政治的主張というのはほとんど賛成できないし、投票したこともないけど、人間的に面白くて好きなんだよ。ロックンローラーとしてファンだ、みたいなところがあるわけ。

何ですか、それは。

:確かにマスメディアの発達とか、国民の理解度とかの分析をすると、政治家の発言は、シンプルにして、何度も言うというのが効く、というのはあるんだよ。それは岡田さんだってちゃんと分かっている。だけど彼は、どんな手を打っても勝つ、ということよりは、自分の信念を貫いた方がいい、とした。

小田嶋:今の選挙の流れって、やっぱりアメリカ的になっているでしょう。ほら、あらゆる人種、あらゆる階級に通じる言葉を使う、というあたりが。

:そうだよね。だって、オバマなんて、「Yes, we can」だよ。中学1年後半のキャッチフレーズだもんね。

小田嶋:英検4級以上の言葉は使えない、みたいなところですよ。でも本当は、党首の個人的な魅力やワンフレーズみたいなことで、票が、がさがさっと右左に動いちゃうこと自体、軽薄な話で、そうじゃないような政治風土が起きていくべきなんだろうけど。

:残念ながら、そこからどんどん遠くなっている、という感はある。

「申し訳なかった」と頭を下げた民主党の議員

小田嶋:だいたい昔の日本では、党首なんて飾り物でね。それどころか、政治家は悪相じゃないとだめだ、なんていう思い込みが、ちょっとあったりしたよね。大平正芳だったり、竹下登だったり、いい男は政治家にならない、というのが不文律であったじゃない? でも、細川護熙ぐらいから、だんだん変わってきたでしょう。

:それで僕は、あの郵政民営化選挙の日は当然、民主党にいたんですよね。

広告担当者として。

:そう。それ、殴られるかもしれない、みたいな状況だよね(笑)。でもね、民主党の宣伝を担当していた議員たちが、謝ってきたわけです。シンプルに戦った方がいい、という提案を聞かないで申し訳なかった、と。

それ、珍しいですね。

:メーカーだったら、あり得ないよ(笑)。だけど民主党は謝るんだ、と。それ以来、結構、民主党のシンパなの。いや、まったく個人的なレベルですよ、この話は。

小田嶋:だったら、岡田が党首で、鳩山由紀夫が幹事長の方がバランスはいいかもね。

:党首というのは、信念があれば口下手でもいいと、僕は思うんですよ。鳩山さんとは話したことがないから、どういう人かよく分からないけど。

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