ミオ達は、初代ワシントンからビル・クリントンまで歴代36人の大統領の就任演説に出てくる計12万以上の言葉を精査した結果、「カリスマと評価される大統領の方が、就任演説でメタファーを多く使っている」傾向を確認したのです。

 ちなみに、先のエンリッヒの研究で、大統領就任演説でイメージ型の言葉を高い比率で使っていたのは、1位:ニクソン、2位:レーガン、3位:アイゼンハワー、4位:ケネディ、5位:ジョンソンの順番でした。ミオの研究で比喩的な言葉を使う率が高かったのは、1位:ニクソン、2位:ジョージ・ブッシュ(父親の方)、3位:クリントン、4位:ケネディ、5位:ジョンソンです。

 どちらの結果でも、ニクソン大統領が1位になっているのは興味深いところです。あのケネディ大統領も両研究で4位です。この2人が大統領の座を争った1960年の選挙戦は、さぞかし名演説の応酬だったのでしょう。

カリスマリーダーは、相手の五感に訴える

 このように、「カリスマ」「偉大なリーダー」と評価される人は、自身のビジョンを伝えるために、イメージ型の言葉やメタファー、すなわち「相手の五感に訴える」言葉を使う傾向があります。そう考えてみると、今台頭している日本のビジネスリーダーにも、そういう方は多いかもしれません。例えば、ソフトバンク社長の孫正義氏などは、そうではないでしょうか。

 名言が多いことで知られる孫社長ですが、それをみると、まさにイメージ型の言葉やメタファーのオンパレードです(参考)。例えばウェブ上にある孫社長の名言集サイトなどをみると、

○お金には色があるというのが僕の持論です。
○会社に新しい「血」を注ぐことで、チャンスや可能性が広がる。

といった辺りがそうですし、

○近くを見るから船酔いするんです。100キロ先を見てれば景色は絶対にぶれない。ビジョンがあれば、少々の嵐にもへこたれません。

 などは、まさにビジョンの意義をメタファーで語られています。

 私は、「イメージ型の言葉を使えば、すぐにカリスマリーダーになれる」と言いたいわけではありません。前述のミオ達の研究なども、因果関係というよりは、相関関係だけを示していると捉えた方が無難です。

 とはいえ「部下や周囲に自分の考え・ビジョンがうまく伝わらない」と悩む方や、「発信力」が必要なリーダーは、その表現に少し手を加えてみてもいいのかもしれません。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2014年5月27日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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