さてバウム達の研究には、もう1つポイントがあります。それは「CEOと従業員のコミュニケーションの重要性」です。この論文では、前述した分析結果に加えて「CEOと従業員のコミュニケーションが高まるほど企業の成長性が高まる」という結果も得られています。

 もちろんこれは、ある意味当たり前のことでしょう。リーダーと部下のコミュニケーションが重要なのは、今に始まったことではありません。ビジョンを社員に浸透させるには、経営者が自らの声で語りかけることが何より大事なはずです。

 それは当たり前として、では「どのような伝え方がいいのか」に注目した研究はあるのでしょうか。実は、「ビジョンの伝え方」についても、経営学では色々と研究されています。今回はその中でも、リーダーの発する「言葉の選び方」に注目しましょう。

イメージ型の言葉、コンセプト型の言葉

 人が自分の考えを伝える時には、その中身だけではなく、言葉の選び方で効果が変わります。いわゆるレトリック(修辞学)です。リーダーならば、自分のビジョンを組織・部下に浸透させるために言葉を選ぶ必要があります。ここではパデュー大学のシンシア・エンリッヒ達4人が、2001年に経営学の主要学術誌「アドミニストレイティブ・サイエンス・クォータリー」で発表した興味深い論文を紹介しましょう。

 エンリッヒ達は、アメリカ歴代大統領の演説を分析対象にしました。ここで彼女達が注目したのは、演説の中に使われた2つの正反対のタイプの言葉の数です。それは「イメージ型の言葉」と「コンセプト型の言葉」です。

 「イメージ型の言葉」とは、そこからまさに「光景」や「映像」が思い浮かんだり、あるいは臭い・音などのイメージまでも伝わったりするような言葉です。「感性・五感に訴える言葉」といってもいいでしょう。それに対して「コンセプト型の言葉」とは、人の論理的な解釈に訴える言葉です。似たような意味を指す言葉にも、イメージ型とコンセプト型があり、それぞれで印象はかなり違ってきます。

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