この研究でバウム達は、米国木工加工企業183社のCEOとその従業員にアンケート調査をし、構造方程式モデリングという手法で統計分析を行いました。その結果、やはり「CEOが優れたビジョンを持っている企業ほど、事後的な成長率が高くなる」という結果を得たのです。

 ここで当然ながら、では「優れたビジョン」の基準は何かということが気になります。ビジョン研究では、その評価軸には「ビジョンの中身(Vision Content)」と「ビジョンの特性(Vision Attribute)」があるとされています。本稿では、ビジョンの特性の方に注目しましょう。

 この1998年の論文で、バウム達は過去の経営学の研究を精査した結果、優れたビジョンには6つの特性があると指摘しました。それは①簡潔であること、②明快であること、③ある程度抽象的であること、④チャレンジングなこと、⑤未来志向であること、⑥ぶれないこと、です。このうち④~⑥はある意味当たり前のことですので、ここでは①~③に注目しましょう。

LIXILのビジョンは模範的

 日本のビジネスリーダーとして今(2014年)注目されているのは、例えばLIXILグループの藤森義明氏でしょうか。現在(2014年)のLIXILグループのビジョンは、2011年に藤森氏がCEOに就任したときに掲げられました。それは「優れた製品とサービスを通じて、世界中の人びとの豊かで快適な住生活の未来に貢献する」というものです。

 このLIXILのビジョンは、まさに先の①~③の条件を満たしていると私は評価します。まず簡潔なので、①には適合します。「世界の」という言葉でグルーバル重視を明確にし、「快適な住生活」で広い意味での事業ドメインをはっきりさせているので、②の「明快さ」もあてはまるでしょう。

 さらに③の「抽象性」についても、ちょうど程よいのではないでしょうか。例えば「システムキッチン分野で業界売り上げ1位を維持します」といったビジョンでは、具体的すぎて柔軟性が失われます。逆に「お客様の声に真摯に応えます」では、抽象的すぎて、部下もこの会社が何を目指しているのか分かりません。このように一見変哲のないLIXILのビジョンですが、なかなかよく練られているように私は思います。

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