面白い考え方だと思いませんか。寿命が極端に長くなるという変化は過去ほんの150年ぐらいの間のことです。大昔の1世代分、つまりプラス40年~50年分、長生きするようになった。そのことが、以前より多くの人を自己主導型知性へと成長させるチャンスを生み出したのです。年齢と知性の成長は、深く関係しているからです。

すると最終ステージの自己変容型というのは、昔だったら、長老と言われる人が到達したような知性ですね…。

キーガン:アインシュタインは、「人類は明日の問題解決を、その問題を創造したのと同じ知性では解決できない」と言いました。つまり、もっと人類を十分に長く存続させるためには、新しくてもう一段レベルの高い知性を開発しなければいけないのです。そうした知性を備えている人を少しでも多く育てなければいけないのです。

仕事で成果を出すために払う「多大な犠牲」に気づく

壮大なお話ですが、それが本書の内容にも関係があるわけですね。本書では、2人の、変革が必要な「自己主導型知性」を備えた人物が登場します。1人は職人肌でスキルの高い工場出身の30代のゼネラルマネジャーです。ホワイトカラーをいつでも替えのきく給料泥棒と思い、自分が体を動かすことこそが重要だと思っている。そのために部下に権限を委譲し、仕事を任せたり力を借りたりすることが「押し付け」「怠け者」になるように思えてなかなかできない。

 もう1人は、仕事で150%全力を尽くさなければ納得できない、完璧主義の女性マーケターです。完璧主義で自分に対して課す目標が厳しく、周囲に迷惑をかけたくない思いが強すぎて1人で抱え込み、ストレスで感情の抑制が難しくなってしまう。でも、2人とも成果は出している。

キーガン:物事には2つの側面があるのです。仕事がうまくいっている人は、一方で多大な犠牲を払っている場合があります。その犠牲があまりに長く続くと、結局持続可能でなくなってしまう。ご指摘の2人の場合、詳しくは本書にも書きましたが、明らかに働き過ぎですし、もう燃え尽きる寸前です。特にマーケターの女性は素晴らしい成果を出し続けているのですが、責任感が強すぎて過大なストレスを抱えてしまい、感情のコントロールが問題でした。似たような人が周囲に大勢いませんか?(笑)

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