さらに、前述のミューレンたちのメタ・アナリシス研究からは、この傾向が特に「権威のある人」がブレストに参加すると顕著になることも示されています。みなさんも、ブレストと称して会議をしながら、同席した本部長に気兼ねして意見が出せず、結局本部長だけがしゃべり続ける、という場面に遭遇したことがあるかもしれません。

 第2の理由は、「集団で話すときは思考が止まりがち」なことです。個人でアイデアを考えている限りは、思考はいくらでも飛躍させられます。しかしブレストでは相手の話も聞く必要があり、その間は自分の思考は止まってしまいます。「せっかく何か思い付きかけていたのに、他人の話が思考を遮った」という経験のある方は多いのではないでしょうか。これが全体のロスを生むのです。

 もちろん本連載の「『日本企業に女性はいらない』が、経営学者の総論」でも述べたように、複数人のアイデアを組み合わせることは創造性の源泉でもあります。しかし、そのメリットを上回ってプロダクティビティー・ロスが深刻な場合は、ブレストではアイデアが出にくくなるのです。

 では、みなさんがブレストをすることは、何の意味もないのでしょうか。興味深いことに、世間で「クリエーティブ」と呼ばれる組織がいまだにブレストを重視しているのも事実です。では彼らは、なぜ効率が悪いはずのブレストをするのでしょう。

 この疑問に正面から取り組んだのが、米スタンフォード大学(当時)の2人の経営学者、ボブ・サットンとアンドリュー・ハーガドンです。

世界最高のクリエイティブ集団のブレスト

 サットンとハーガドンが1996年に経営学の主要学術誌「アドミニストレイティブ・サイエンス・クォータリー」に発表した論文では、米デザイン企業のIDEOで行われているブレイン・ストーミングが分析されています。

 IDEOはご存知の方も多いでしょう。世界で最も成功したデザイン会社であり、そのアイデアを生み出す手法は、多くのクリエイター、デザイナー、エンジニアから注目されています。同社は東京にもオフィスを構えています。

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