具体的に何をすべきでしょうか。
藤田:やるべきことは決まっています。住居です。家賃補助を入れるべきです。
皆さんが何にお金をかけているかというと住まい。35年ローンを組み、定年までに払い終わらない人が多い。仮にローンを払い終わっても、老後の資金をすべて住宅につぎ込み、貯蓄額なんてありません。持ち家に資産価値があれば良いのですが、35年経つと目減りした不動産価値しか残らない。
持ち家が首を絞める?
マンションも二束三文の価値になってしまいます。賃貸の場合、現役時代と異なり、定年後の年金支給額15万前後では、8万~10万円の家賃は到底払えません。
金銭的支援は国庫財源を考えても限界があります。
藤田:家賃補助が難しい場合、フランスのように、公営住宅の絶対量を増やすべきでしょう。
日本では、全住宅のうち公営住宅はわずか4%程度です。一方、フランスは40年前からインフラ整備を進めており、今は約20%に増えました。フランスの場合も老後の年金は月額10万~12万円程度で日本と変わりません。ですが、家賃は月額5000~1万円。手元に1カ月で9万~10万円が残る計算になります。
持ち家は資産価値の希薄化問題だけでなく、老朽化による修繕費、固定資産税などの税金も重荷になります。
藤田:そうですね。老朽化した持ち家であっても資産と見なされるため、貧困に陥ったとしても、生活保護の申請が認められない事例が増え、問題になっています。
一方で、郊外を中心に空き家も社会問題になっていますね。
藤田:行政がゼロから公営住宅を作るのはコストがかかります。手元に今あるストック、つまり空き家をリフォームしながら使うことは重要です。それが実現するだけでも、相当な高齢者が救われます。
我々の独自調査では年収200万円の若者の8割が実家に住んでいました。実家から出られず、結婚ができないし、子供も作れません。200万円でも独り立ちできるような政策を打たないと、彼らが老後に貧困に苛まれるだけでなく、彼らの両親の老後の生活すら苦しめることにもなります。
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