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「男女平等」な兵役への流れ

 しかし、現在の国際社会はジェンダー平等としてはいい方向に動いている。

 特に画期的だったのは男女平等先進国、ノルウェーの徴兵制の男女平等化だ。2015年に女性も平等に徴兵するという法案が成立し、早ければ2015年から実施される。

 北欧でも男性は進学率が女性より低くなる傾向が出てきていたが、兵役は無関係ではないだろう。男性だけが若い時期に何年も兵役に取られ、軍隊で非人間的扱いを受けている間、女性は大学で勉強できるため進学率に差がつくのも当然だ。そして男女平等派の男性たち(マスキュリスト)や一部のフェミニストたちが、男性だけの徴兵は不当だと何度も主張してきて、現在がある。

 兵役があるその他の先進国もノルウェーを見習う可能性はあるだろう。アメリカでも最近は、女性を戦闘員として参加させることを合法にするように法改正がされており(2013年)、女性の現場における指揮官も海軍で誕生した。

 これら欧米の動きは主に二つの流れによって促進されている。一つはフェミニズム。フェミニズム側は、指揮官などの軍隊における女性の高い地位が欲しいのだ。指揮官に就きたければ当然、兵役にも参加しなくてはならないし、戦闘地にも派遣される必要もある。

 二つ目の流れはマスキュリストたちの「兵役が男だけに課されるのは男性差別だ」という声。明らかな生命権を侵害するセクシズムとしてずっと反対しており、その声が通るようになってきた。何度も訴訟している。

 兵役は男女平等に違反しているという主張はアメリカでも早くから出てきている。例えば、マスキュリズム映画として有名なのは90年代の「GIジェーン」だ。軍人の有名キャラクターであるGIジョーの女性版で、女性が軍隊に入って男と同じ状況下に置かれる映画である。男性が軍隊で受けるような仕打ちが全く同じように主人公の女性に与えられ、最後にはそれを「克服し」、一人前の兵士になる。

 「『フェミニズム映画』だと思ってみたら、フェミニズムじゃなかった」と当時のフェミニスト学者は言っていたがそれは当然のことだ。男性差別反対派が作ったマスキュリズム映画だからだ。「軍隊は男が好きで行っている? 男の権力? そう思うならどうぞやってくれ。アメリカ社会に男性差別などないって? じゃあ同じ仕打ちを受けてみたら」という悲痛な映画である。いかに男性も性差別の抑圧を受けているかを告発して、「女性も戦場に送れ」という映画なのである。

 これはアメリカの90年代の男性の反応としては当然だ。日本だと現在ちょうど、アファーマティブ・アクションや数値目標が広まり始めたが、アメリカでは90年代前半までには実施されている。男性差別解放の動きは女性の解放と連動する。

 米国でフェミニズムはどんな小さなことでも女性差別は許さず、また強制的な女性への性役割は許さない。米国では、軍隊から帰ってきた男性たちが職業に優先的に就けるようにする施策に対しても「女性差別」という主張さえされた。何の補償も特典もなく無償で男性に兵役という人生を損なう負担を受けろということだろうか。