とても幼い頃から学んでいます。そうしなければ商売ができないからですね。生きるために学んでいる。取引をするために、選択の余地がないんですよ。

入山:なるほど。最近、韓国人や台湾の人々が大勢米国にやってくるのですが、それもおっしゃる通りだから、納得ですね。 

ニーリー:国の場所も重要ですね。日本は島国だから、言語上も孤立している、という言い方もできます。

入山:日本政府に何かアドバイスはできませんか?

ニーリー:安倍晋三首相も、企業のトップもかなり真剣に英語のことを考えていると思います。文部科学省もそうでしょう。先日も、モルガン・スタンレー証券のロバート・フェルドマン氏が、大学生にTOEFL受験を必修としてはどうかと話していました。確かに、TOEFLで高得点を取ることは、世界中の大学に行けることにつながります。それはとても大きな構造的な変化ですね。

従業員の英語学習を、企業は金銭支援せよ

入山:日本企業が英語を公用語化する場合ですが、その過程で従業員は自腹で学んでいるケースもあると聞いたことがあります。

ニーリー:そうなのですか。あまり良くないですね。

入山:そうなのでしょうか。なぜですか。

ニーリー:従業員は、レッスンを受け、テストを受け、忙しい中で時間を割いて英語を勉強しなければいけないわけですね。例えばTOEICのスコアを達成しなければならないとなったら、かなりお金をかけなければならないことになる。

 企業経営者はそれを金銭的に支援すべきだと思います。語学習得というのは、とってもお金も労力もかかるのです。誰にとってもそうです。そして、もし従業員にそれを強いるのであれば、それを仕事上欠かせないスキルとみなすべきです。英語を学ぶのも仕事の一部。業務の1つです。だから自腹でさせるべきではありません。

ニーリー:しかし英語習得は、個人的なことではなくて、全員にとっての願いであるべきです。会社としてのミッションなのですから。1人がだんだんうまくなってくると、それが伝染してみんなで頑張れるようになります。感情は伝染していくんです。

入山:言語と多様性についてはどうでしょうか。たとえば今注目されているリクシルの場合、多様性と言語の両方を強調している印象があります。言語というものは、多様性を伴ってくるものだと思います。

ニーリー:いい質問ですね。多様性は、共通言語なしには成し遂げられません。日本人、米国人、アラブ人など数多くの国のスタッフからなるチームがあったとしたら、共通の目的のため一緒に頑張るためには、共通言語のほかに手段がありません。共通言語なしにグローバルな成功はあり得ないのです。

 先ほどの社歌や企業理念の共通言語化の事例でも触れたように、他人に理解できる言葉こそが文化や理念を伝える唯一の手段です。言葉によって理念が世界中に運ばれていくのです。

英語を個人的ゴールではなく、みんなのゴールに

 公用語化したからといって母国の人同士でどうするかは話が別です。共通言語を導入したら、自分たちの言語が破壊されるのか?といったら、そんなことはありません。母国の人とは、母国語で話したいのは人として当たり前です。ただ何かを話す時、「そこにどこの国の人がいるのか」、それを考慮することが重要ということです。

入山:多様性の実現、グローバル化の効率化、フォルトライン理論の側面からも組織にとって共通言語が実に重要であることが分かりました。本日はありがとうございました。

(翻訳・構成:広野彩子)

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