2014年1月中旬には、欧州の安全装置メーカーの幹部がナルセ機材を訪れ、ナルセペダル搭載車を試乗。「ロンドンのバスなど、公共交通機関から導入するのが普及の近道かもしれない」との感想を残し、満足気に帰国していったという。今後、具体的な事業提携の話が進む可能性もある。

 ペダルの踏み間違い事故を防ぎ、自分自身で早くクルマを制御することに寄与するアナログな機構のナルセペダル。その対極にあるようなハイテク技術を使い、電子制御で安全を確保しようとする自動ブレーキ。どちらが本当に安全なのか――。

 思わず対比させてしまうが、クルマの安全性を追求していくなら、どちらかを選ぶという話ではなく、最終的には両方搭載して組み合わせるのがベストだと思う。

ハイテクとアナログの融合が高齢化社会を救う

 かつてのクルマの主流は、クラッチを搭載し3つのペダルがあったMT(手動変速機)車。その後AT車が登場し、アクセルとブレーキという2つペダルのクルマが市場の中心になった。安全性をできるだけ高めるなら、このまま自動ブレーキ機能だけが高度化していくのでは不十分かもしれない。その限界も認め、踏み間違えを防ぎ、ブレーキまでの時間を、より短縮できるペダル1つの仕組みにも、もっと着目して良さそうだ。

 交通事故の削減につなげるため、地元の警察や行政にも鳴瀬社長自身がナルセペダルの有用性をアピールし続けているが、反応はあまり良くないという。

 ただ、ナルセペダルの評判は少しずつ広まり、それを求める人も着実に増えている。自動車関連の企業も興味を示していることは確か。仮に、どこかの大手メーカーと大々的に組むことになれば、これまでの流れは大きく変わるだろう。

 日本が誇る大手自動車メーカーがこぞって開発する最先端の自動ブレーキ機能と、職人技が光る熊本の中小企業が開発したワンペダルの標準装備車。ハイテクとアナログが融合した、これまでになく安全なクルマになるのではないか。

 だが、日本でこのようなクルマが走り始める前に、ロンドンのバスにこの理想的な組み合わせが導入されてしまうこともあり得るのだろうか。それはそれで喜ばしいことではあるが、そうなったら日本人として少し寂しい気もする。

鳴瀬社長も自動ブレーキとナルセペダルの組み合わせは効果的と考える

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2014年2月10日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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