クルマを降りると、若手技術者がナルセペダルを一般車に取り付ける作業をしていた。ナルセペダルは一般車に後付けで装着できる。既存のアクセルとブレーキのペダルをすべて外し、ナルセペダルに取り換える。

ペダル取り付けの作業日程は、納品までに数日から1週間程度。取り付け作業だけでなくアクセルやブレーキのかかり具合のチェックや、微調整の作業が必要だ。
ただ、装着作業は単純ではない。メーカーや車種ごとに、アクセルやブレーキペダルの設計思想や癖が異なるため、クルマごとに調整作業が必要。ナルセペダルを装着する工程は、現状の仕組みではこれ以上の簡略化や短縮は難しいそうだ。
機器と工賃含め、十数万円で買える安全
取り付け価格は、クルマを持ち込むかどうかで変わってくるが、機器と工賃を含め11万円~14万円程度。ここ2~3年での取り付け依頼が200台程度と、近年は依頼が増えている状況だ。口コミや紹介での依頼が多い。高齢化してもクルマに乗り続ける親を心配し、その子供が問い合わせをしてくることもあるという。

鳴瀬社長は発明家の顔を持ち、ナルセ機材の主力製品の1つである、のり養殖用機器なども同氏が独自に生み出した。
ナルセペダルの研究開発を鳴瀬社長が始めてから、既に20数年が経過。装着実績は、累計約300台まで増えてきた。
ナルセペダルの開発に着手したのは、自分の経験がきっかけだ。大きな事故にはならなかったが、鳴瀬社長がクルマの運転中、ブレーキとアクセルを何度か踏み間違えたのだ。「踏み間違え事故は、運転の習熟度が原因ではなく、現状のAT(自動変速機)車の2つペダルの仕組みに問題があると考えた」(鳴瀬社長)ことから、研究開発は始まった。
自らペダルを試作し、自分のクルマに搭載して改良を重ねる。家族や知人のクルマにも、頼み込んでペダルを付け替えてもらい、それらの意見を参考にして、改善を続けてきた。
こうした試行錯誤を経て、現在のナルセペダルにつながる仕組みができあがった。関連技術は、1993年に米国で特許を取得。95年には日本と英国、ドイツ、フランス、イタリア、韓国でも特許を取った。
既存のペダルをナルセペダルに着け替えて一般公道を走っても、規制や法的な問題がないことを、鳴瀬社長は当局に確認済みだ。
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