つま先を右側へずらすほど加速し、前に踏み込めばブレーキがかかる。非常に単純な動作だ。普通のクルマは、ブレーキもアクセルも踏み込む動作だが、このナルセペダルの仕組みであれば、踏み込む動作はブレーキだけ。実際に運転してみると、原理的に踏み間違えが起こりにくいことを改めて実感できる。

 日本での交通事故は着実に減少し、2000年に約82万件だった発生件数は2009年には約65万件と2割近く下落した。

 だが事故原因ごとに細かく見てみると、この間に増えている事故原因がある。それが、アクセルとブレーキのペダル踏み間違いによる交通事故。6436件から6577件へ増加している(いずれも交通事故総合分析センター調べ)。

急増必至の「アクセルとブレーキの踏み間違い事故」

 日本では高齢化が進んでいるため、高齢のドライバーも当然増えていく。そうなるとペダル踏み間違い事故は、今後も増え続ける可能性は高い。市場環境としては、ナルセペダルに追い風が吹くはずだ。

 当初は運転しながら足元に意識が集中していたが、次第に気にならなくなり、助手席に座った鳴瀬社長と、取材じみた会話ができる余裕が生まれ始めた。だが試乗は、一般道だけでは終わらなかった。

 「慣れてきたみたいだから、ちょっと遠回りして、高速道路に乗ってみましょう。どれだけナルセペダルが、直観的に使えるものなのか、もっと体感してもらいたい」と社長。それだけ自信があるということだろう。スピードを出す高速道に乗ってしまっても大丈夫か、やや不安になったが、とても断れる状況ではなかった。

 ほどなくして、高速道路の入り口が現れた。もう行くしかない。料金所を通り、加速車線で、つま先を素早く右へ大きくずらす。クルマがぐんぐん加速していく。

 結局、当初の心配は無用なものだった。すぐに一般道と同様に、助手席の社長と普通に会話し、取材ができる状態になっていた。高速での走行も体験したことにより、ワンペダルでの運転は、ペダルの踏み変えで足を上に上げる動作がない分、足が疲れにくいことも発見した。

 筆者の運転に満足したのか、クルマの中で鳴瀬社長は段々と冗舌になっていく。

 2013年11月にマツダの試乗会で自動ブレーキ機能搭載車の事故が発生したあとナルセペダルへの一般消費者からの問い合わせが増えていること、同時に大手の自動車メーカーや自動車部品メーカー関係者から打ち合わせや試乗の打診が相次いでいることなどを教えてくれた。

 社名は詳細に明かしてくれはしなかったが、自動車メーカーや部品メーカーが、水面下でナルセ機材へ接触していることには驚いた。

 約45分のドライブを経て、熊本県玉名市のナルセ機材に到着した。作業場は、まさに町工場の様相だ。

ナルセ機材の作業現場

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