本連載は、2013年まで米国のビジネススクールで助教授を務めていた筆者が、世界の経営学の知見を紹介していきます。

 さて、最近は日本でも女性のビジネスリーダーが注目されるようになりました。起業家なら、たとえばDeNAの南場智子さんやネットイヤーの石黒不二代さんがその筆頭でしょうか。大手企業でも、この4月(2014年)より伊藤忠商事の茅野みつるさんが大手商社で初の女性(しかも同社最年少の)執行役員に就任することが話題になっています。みずほ銀行では、有馬充美さんがメガバンクで初の女性役員に就任することが決まっています。

 女性のビジネスリーダーが現れてきたのは素晴らしいことだ、と私は思っています。それは社会的にどうだこうだというのではなく、実は経営学の研究で「男性よりも女性の方が『組織にプラスなリーダー』になりやすい」可能性が指摘されているからです。

 今回は「女性と男性のリーダーシップ」について、世界の経営学の知見を紹介しましょう。そのためには、まず経営学でコンセンサスとなりつつある「2種類のリーダーシップ」について解説する必要があります。

リーダーシップには2つある

 その2種類とは「トランザクティブ・リーダーシップ」と「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」です。欧米のリーダーシップ研究者で、この区分けを知らないものはいない、と言ってもいいかもしれません。

 まずトランザクティブ・リーダーとは、部下の自己意思を重んじ、まさに取引(=トランザクティブ)のように部下とやりとりするリーダーです。部下に対して「アメとムチ」をうまく使えるタイプのリーダー、ともいえます。

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