4つの価値基準

辻井:パタゴニアには僕たちが日々大切にしている価値観、「コアバリュー」があります。4つあるのですが、1つ目がクオリティー。品質だけではなく、あらゆることの「質」を常に向上させようという気持ちを持って働くことが大切だと考えています。

 2つ目がインテグリティー。僕たちは「誠実さ」と訳しています。お客様にいくら誠実に接しても、スタッフ同士や、ベンダーさんに対しては不誠実であってはなりません。また、未来世代や地球に対してもインテグリティーはもちろん必要だし、動物に対してもそうです。

 3つ目が「環境主義」。企業としても個人としても、環境負荷をなるべく減らすことと同時に、環境問題の解決に向けてスタッフ自身が活動することを奨励します。例えば、グリーン電力を購入したり、出張の際にはCO2などの環境負荷を考慮して交通手段を決めたりします。また、社員が有給で草の根環境団体で最長8週間働くことが出来る環境インターンシッププログラムなどもあります。

 最後が「Not bound by convention」。「慣例にとらわれない」こと。以前うまくいったからといって、何も考えずに前例を踏襲するのではなく、その時々の状況に応じて行動すること、失敗を恐れずに新しい方法にチャレンジする姿勢などが評価されることですね。

しかし、4つの価値基準に照らし合わせて判断していくといっても、これ線引きが難しいですよね。

辻井:そうですね。簡単ではないかもしれません。「今の発言は誠実じゃないよね」とか、「それ、フィロソフィーに反しているじゃないか」とか言われても、人によって理解の仕方が違ってくる恐れはありますね。でも、そうしたお互いの理解の仕方を、対話で確認することが大切だと考えています。

 例えば、カスタマー・ファーストや顧客満足度の最大化と言う考え方があります。でも、同時に矛盾したこともやっている。購入頂いた製品を入れる紙袋を差し上げてない。「皆さん、出来る限りマイバッグをお持ちください」とお願いしています。なるべく無駄を省いて、環境に対して不必要なインパクトを出さないようにすることを啓発することが僕たちのミッションだからです。

 でも、現実には、いろいろな状況があって、袋を希望されるお客様もいるかもしれないわけです。この時、どうすればいいのか--。例えば、「パタゴニアでは不要な無駄を省くことが大切だと考えている」という基本姿勢をしっかり説明した上で、その場では別の方法で対応することも考えられます。

 結局、「こういうことをしたら誠実」で、「こういう行動は誠実じゃない」という風に、「誠実さ」というバリューを行動レベルまで落とし込んで、スタッフ同士が対話を続けることが一番大切だと考えています。

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