辻井:基本的には同じです。僕たちが重視していることは2つあります。1つは、アウトドアスポーツに真剣に取り組んでいること。レベルは問わず、「生涯やっていきたい」と思うことがあればいいんです。2つ目に、環境問題に関心があるかどうか。何か特別なアクションを起こしていなくてもいいんですが、とにかく地球の未来をどうしていきたいか、そういうことに関心があるかどうか。その上で、ビジネスリテラシーとかスキルという順番ですね。

なにゆえ、この順番に。

辻井:最初の2つは教えることが難しいからです。嫌いなものを好きになってもらったり、モチベーションを「教え」たりすることが難しいのと一緒です。

体育会系じゃないと入れない。狭き門ですね。

辻井:実際にはアウトドアスポーツでなくてもいいと考えています。例えば、日本支社にはフラメンコに長く打ち込んでいる女性がいます。創業者であるイヴォンが「社員をサーフィンに行かせよう」と言い出したのは、もう随分、前からのことです。実際、社員は周囲に迷惑をかけず、また自分の責任をしっかり果たせば、いつでもサーフィンに行っていい。平日勤務時間でも構わない。彼は自分が好きなサーフィンを例に挙げましたが、実はサーフィンじゃなくてもクライミングでも、フラメンコでもいいんです。

「社員をサーフィンに行かせよう」のメリット

もちろん、会社としてもいい効果もあるから?

辻井:はい。会社にとってもいろんな効果があります。まず、私たちはアウトドアスポーツ用の衣類を販売していますので、その用途にあったスポーツで実際に自社製品を使うことは大事なことです。例えば、スノーボード用のウェアを実際に雪山で使用すれば、首元のデザインがどうやって雪の侵入を防いでくれるか、ということを自ら確かめられます。お客様に的確な情報をお伝えするには、実際のフィールドで経験するのが一番です。

 それから、これはアウトドアスポーツにかかわらずですが、自分の好きなことを実践するために、社員たちが仕事を効率的に工夫して行うようになることです。遊ぶためにはフレキシブルに仕事を調整できないといけません。休みの日にサーフィンやスキーをしたいと思っても、天気予報通りの自然条件になるとは限りません。場合によっては、平日にベストコンディションがやってくる時もある。その瞬間に出かけられるようにするには、柔軟に対応できる体制を作っておくことが大事になります。

 それから仲間たちの協力も不可欠です。パタゴニアでは「サーフィンに行ってきていいですか」と聞けば、周囲が「いいよ。楽しんできて」と応えることがほとんどです。が、いつも、みんなが気持ちよく応えてくれるためには、やはり普段から、きちんと業務に取り組む必要がある。

 アウトドアスポーツに限らず、いろいろな理由で自分がいない時に周囲の仲間に迷惑をかけないためには、1人で仕事を抱え込まないで、普段から自分の仕事の内容を整理して、共有しておく必要がある一方的な要求ばかりではなく、困っていることがあれば、お互いにサポートできるような体制を普段から構築しておくことが大事です。

でも、ずっとサーフィンに行ったり山にこもったりされていても困ります。

辻井:確かに全員がいなくなったら困りますね。だからこそ自分が好きなことを実現するための責任を1人ひとりが果たすことが大切になります。言い換えると、期日通りに仕事を仕上げたり、きちんと成果をあげられる、そのことを上司と部下が、あるいは社員同士が信じ合って初めて成り立つ仕組みだと言えるかもしれません。

なるほど。社員同士間にも強い互助精神がある。それがないとサーフィンにも行けないわけですから、社員各自も、自分を律する気持ちも働きますね。要は、「社員をサーフィンに行かせよう」という精神は、パタゴニアの「フレックスタイム」制度であり、かつ「ジョブシェアリング」の考え方を一言で表現したもの...

辻井:そう言えると思います。ええ、でも、実は、最近こうした企業文化を更に高いレベルで実践できるような仕組みを作る必要があるのではないかと考えています。

というのは。

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