調理こそ「人類の歴史始まって以来の事態」

 現代の食習慣ではなぜ病気になりやすいのか。ハーバード大学の霊長類学者リチャード・ランガムによると、人間の食生活に最大の革命をもたらしたのは肉食ではなく、調理を始めたことだという。

 180万年前から40万年前までの間のある時点で、人類は調理することを覚え、そのおかげで子どもの生存率が高まった。食べ物を細かく砕き、火を使って調理すれば、消化しやすくなり、生で食べるよりも胃腸の負担が減って、余ったエネルギーを脳の活動に回せる。

「調理することで、高カロリーの軟らかい食品を食べられるようになったのです」

 現代人は生の食べ物だけでは生きられない。人類は調理された食品に依存するように進化してきたのだと、ランガムは説明する。

魚を突きに潜ったバジャウの男が、タコを仕留めた。バジャウ族はキャッサバを除き、海の恵みだけを食べる。(Photograph by Matthieu Paley/National Geographic)

 ランガムの説が正しいなら、初期の人類は調理を覚えて大きな脳を獲得できただけでなく、食べ物からより多くのカロリーを摂取できるようになり、体重が増えたと考えられる。現代ではこれが裏目に出ているようだ。食品の加工技術が高度になり、1日の摂取カロリーが消費カロリーを上回る人が増えた。これは人類の歴史始まって以来の事態だ。「素朴なパンが高カロリーのお菓子に、リンゴがアップルジュースに取って代わられた。高度に加工された食品はカロリーが高いことに、もっと注意を向ける必要がある」と、ランガムは書いている。

 加工食品を多く食べることが、肥満や生活習慣病の増加につながっているというわけだ。地元産の野菜や果物をもっと食べ、少量の肉と魚、全粒の穀物をとり、1日1時間は運動すること。こうした習慣を多くの人が実践すれば、健康にも良いし、環境負荷も抑えられるだろう。

(写真=マチュー・パレイ)

ナショナルジオグラフィック2014年9月号特集「食べ物と人類の進化」より抜粋

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2014年8月28日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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