音楽は言葉の壁を超える、と言いますが、その音楽を知ってもらうには、まず言葉が要る。
中澤:人々を感動させるのは、音楽そのものです。しかし、その音楽を聴いてもらうために必要なことがあるなら、それをしっかり提供しなければ。音がすべてだと言って、他のことをしなければ、音さえも届かなくなってしまう…。自分で音楽業界以外の経験をしてよかったと思うのは、こんな時です。「業界の常識」を踏まえつつも、そこにとどまるのではなく、「もっと良いやり方」を考える。閉塞感のある業界には、そうした「外の目」が必要なのだと思います。
地道な支援はいつか花咲く
若手演奏家への楽器の貸与についても力を入れていますね。
中澤:若手演奏家の活躍は、まさにクラシック界の未来に直結することなので、積極的に取り組んでいます。
現在(2014年)は壱番屋創業者の宗次徳二さんと一緒に活動をさせていただいています。宗次さんは壱番屋の経営から引退された後、名古屋に「宗次ホール」を自ら建設、若手演奏家のコンサートを積極的に開催しながら、ヴァイオリンの名品を若手演奏家に無償で貸与する活動を続けています。私どもは、楽器を貸与する演奏家の選定や楽器の管理などについて協力させていただいています。

楽器の善し悪しは、やはり演奏を左右する?
中澤:同じように優れた演奏技術があるとしたら、良い楽器の方が良い演奏になるでしょう。例えば、名器と名高いストラディヴァリウスは約350年間、大事にされてきた。それは、素晴らしい音色を奏でてくれるからこそです。

そして、優れた楽器は、持つ者に優れた演奏を求めます。その楽器の持つ優れた音色を懸命に追うことで、演奏する者は腕を上げ、さらに良い音色を響かせるのです。
若手演奏家にそうしたチャンスを提供することは、日本のクラシック界をより良くしていく一助になるはず、と信じて取り組んできた結果、活動を支援をしてきた岡本誠司さんが2014年ヨハン・ゼバスティアン・バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝、チェリストの上野通明さんがヨハネス・ブラームス国際コンクール・チェロ部門で第1位を獲得するなど、成果も上がってきています。

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