どのような対策を?

中澤:事態は深刻で一足飛びには解決しません。まずは、若手演奏家と一般の人たちをつなげるミニコンサートをどんどん増やしていきたいと思っています。現在(2014年)、伊藤忠ファッションシステムや東横インなどにコンサート用のスペースを提供いただいて、定期的に開催しています。ある大手マンションディベロッパーでは、住民のコミュニケーション不足解消にミニコンサートを活用したいと検討中で、これが実現すれば、さらに全国数百カ所で開催できることになります。そのほかにも、ポーラ化粧品、銀座三越など様々な分野の企業にアプローチをしていますし、問い合わせもいただいています。

若手演奏家にとって、ありがたい環境ができてきた。

中澤:それが、最初は希望者が少なくて…。

なぜですか?

中澤:原因は「安売り」問題と「挨拶」問題でした。

まずは演奏家の意識から改革

具体的に教えてください。

中澤:「安売り」問題は、「コンサートをやるなら、大きなホールでやりたい。小さなイベントスペースでコンサートをやるなんて、自分の演奏を安売りすることになる」と。

しかし、そもそも演奏を聴いてもらう機会を得る方が大事では?

中澤:そう説明したのですが、最初はなかなか…。それが、ある著名な演奏家が参加してくれたのをきっかけに、次々と申し込みが集まってきました。本当は自分も参加したいと思っていたのだけれど、最初に手を挙げるのはプライドが許さなかった、ということでしょう。

 「挨拶」問題も根は同じです。

 私たちのコンサートでは、出演する演奏家に必ず話をしてもらいます。まず自己紹介、そして演奏する曲についての解説をしてもらうのです。聞きに来てくれる人は、大方、クラシックに詳しくない人たちなので、クラシックの楽しみ方を知ってもらうことが大事。ならば、演奏家自らが聴き方、聴きどころを説明するのが一番でしょう? しかし、一般のコンサートでは、演奏家はお辞儀はしますが、マイクを持って挨拶したりしない。だから、やりたくない、というわけです。これも、他の出演者たちがやれば自分もやる、というパターンで、今では、皆が解説をしてくれます。

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