クラシックに関わる分野の担当を?
中澤:最初の3年は営業としてユニクロを担当しました。その後、メディアプランナーとしていろいろな企業を担当するようになり、やがて様々な音楽系のプロジェクトに関わるようになりました。
2012年には、クラシック音楽の発展と若手音楽家の活動支援を目指すプロジェクトチーム「クラシック・フォー・ジャパン」を発足。プロジェクトが増えたために一般財団法人化した2013年には、被災地の復興支援の一環として、宮城県松島町で「ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ」というフェスティバルを手掛けました。「アーク・ノヴァ」と名付けられたバルーン構造のコンサートホールを建設して、国内外のすぐれた音楽や芸術、伝統芸能が一堂に会するというものです。これがきっかけとなり、若手演奏家によるミニコンサートを定期的に開催するプロジェクトをスタートさせることとなりました。
「1%危機」…絶滅回避へ草鞋を脱ぐ
音楽と生活とビジネスを結びつける様々な取り組みが実現できるようになった。そのまま電通で働きながら、クラシック関連の活動を続けるという選択肢もあったのでは?

中澤:電通での活動には手応えもやりがいも感じていましたので、正直、迷いました。しかし、クラシック業界を何とかしなければいけない。そのためには100%全力で取り組まなければ、という思いが上回りました。
クラシック業界にはそれほど切迫した危機が迫っている。
中澤:「クラシック音楽が好き」という人、今、日本にどのくらいいると思いますか?
20%くらい…いや、危機というからには10%くらいですか?
中澤:答えは1%以下です。
う~む、深刻な数字ですね。
中澤:クラシック音楽マーケットは「絶滅危惧種」なんです。
しかし、海外のコンクールで日本の演奏家が優勝したり、世界で活躍する日本人指揮者もいる。コンサートホールも盛況では?
中澤:例えば、ウィーンフィルオーケストラが来日する。席は4万円で満席。別の有名なオーケストラが来日してこちらも満席。一見、盛況のようですが、来ている人はいつも同じ、と考えると、どうですか。1%の熱心なファンが支えていて、広がりがないとしたら。
他方で、音楽大学の卒業生は毎年1万人近くいる。その中のトップの演奏家が日本音楽コンクールで1位を獲って表舞台に出たとして、1%市場で1万分の1…。結局、私が子供の頃に感じた危機的状況は改善されていないんです。
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