このスチュアートらの分析結果は、前出のイバラの結果とまったく反対になっています。

 イバラの研究結果は、男性の方がホモフィリー人脈を活用しやすい、というものでした。しかしスチュアートの結果2をみると、むしろ女性同士の交流がはるかに密になっています。それどころか男性同士の交流は、男性と女性の交流よりも弱くなっています。さらに、「女性同士のホモフィリーなメール交換」は、部署・オフィスの垣根を超えて、社内中に行き渡っているのです。

女性の方が人脈作りに向いている

 なぜイバラとスチュアートのあいだで、逆の結果が出たのでしょうか。ここからは完全な私見になりますが、前者が「人と人のリアルな直接交流による人脈形成」を分析していたのに対し、後者は「電子メールによる人脈形成」を分析しているからではないでしょうか。すなわち、リアルな交流とオンラインの交流では、ホモフィリーな人脈形成の帰趨が、男女で逆転するのかもしれません。

 この私の仮説の前提は、そもそも女性の方が人脈作りに積極的である、というものです。実際、リアルでも電子メールでも女性の方が積極的に人脈作りをする、という研究結果は多くみられます(例:カーネギー・メロン大学のボンカ・ボネヴァたちが2001年に「アメリカン・ビヘイビラル・サイエンティスト」に発表した論文など)。スチュアート論文の結果1もそれに符合します。すなわち、女性はそもそも人脈作りにオープンだが、職場でのリアルな交流による人脈作りは男性優位のため、結果としてホモフィリー人脈を築きにくかっただけではないか、というのが私の考えです。

 しかし、現在は誰でもメールやSNSで社内の人と気軽につながるようになりました。その結果としてリアル交流ではホモフィリー人脈が築けなかった女性も、オンラインでは、まるで地下水脈のように部署を横断してインフォーマル・ネットワークを形成しているのです。

 逆にスチュアートの結果3にあるように、男性同士のホモフィリー人脈は、男性=女性の交流よりも弱くなっています。そして男性同士の人脈は、組織の垣根を超えられません。もしかしたら男性の方が組織枠内の人間関係に気をとられすぎで、女性同士の方が組織の垣根を超えたコミュニケーションがしやすい特性があるのかもしれません。

 このように、職場におけるリアルな人脈と、その水面下で進んでいるオンラインの人脈の違いとその関係は、今後のさらなる研究が望まれるところです。前者は男性優位ですが、後者は女性が主導権を握っている可能性があります。この「リアル人脈」と「オンラインの人脈」が補完的なのか代替的なのか、どちらの影響力が強くなるのか、は私にはわかりません。しかし、もしオンライン人脈の充実がその人の業績に影響力があるのなら、今後はそれを活用して昇進する女性が多く現れるのかもしれません。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2014年2月12日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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