イバラは米大企業4社のマネジャー男女63人を対象として、それぞれが「業務・キャリア形成のために、誰からアドバイス・情報をもらっているか」を調査しました。さらにイバラは、各社上層部の情報から、「この人は昇進が早いだろう」と社内で評価されているマネジャー(以下、ハイポテンシャル人材=HP人材)と、そうでないマネジャー(以下、ノンハイポテンシャル人材=NHP人材)に分類しました。その分類に基づいて統計分析をし、以下の結果を得たのです。

結果1:HP人材かNHP人材かに関わらず、女性の方が男性よりもホモフィリー人脈を活用できていない。

結果2:しかし、女性の中でHP人材とNHP人材を比べると、HP人材の方がホモフィリー人脈を活用できている。

マジョリティーにはない苦労

 結果1は、そもそも男性中心の会社では、女性のホモフィリー人脈が自然と狭くなる、という「第2のハンディキャップ」を示しています。

 興味深いのは結果2です。にもかかわらず、HP人材の女性は、NHP人材の女性よりも女性人脈を好んで活用しているのです。この結果についてイバラは、「男性中心の企業にいる女性が成功するには、同じ困難に直面したことのある女性同僚からのアドバイスが重要だからではないか」と解釈しています。女性には女性特有の仕事上の悩みがあり、その解決法は男性人脈では得られない、というわけです。

 念のためですが、これは女性が男性人脈を頼らなくていい、という意味ではありません。HP人材の女性の方がNHP人材よりも「相対的に」同性の人脈を活用している、ということです。

 たとえば、イバラが1992年に「アドミニストレイティブ・サイエンス・クオータリー」に発表した別の論文では、ある新聞社の社員140人の統計分析から、女性は仕事に直結した情報をなんとか男性人脈から得ようとし、他方でよりパーソナルなことに関するアドバイス・情報は女性人脈から得ている傾向を明らかにしています。HP人材の女性は、男性人脈と女性人脈をかしこく使い分けている、ということでしょう。

 すなわち平たく言ってしまえば、「男とも女とも上手につきあえる女性が、男性中心の職場では成功しやすい」ということになります。(男性はマジョリティーですから、この苦労はありません)

 当たり前のようなこの結論ですが、ポイントは「ホモフィリーの二重のハンディキャップ」により、この実現がたいへん難しいことです。ホモフィリーにより、男性人脈に女性が入り込むのは難しく、他方で女性人脈はそもそも情報の層が薄いのです。

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