さらに、人はその「つながった相手」から影響を受けやすいことも分かっています。たとえば健康な生活をしているAさんは健康に関する知識を豊富にもっていますから、健康なBさんがAさんとつながれば、BさんはAさんから新しい健康の知識を得て、さらに健康になるでしょう。この2人の周りは、他にも健康な人が多くつながりますから、この効果は増幅されていきます。

 逆に、不健康なCさんは不健康な人とつながりやすく、そういった人たちの生活様式に影響されがちなので、さらに不健康になります。ホモフィリーは、健康な人をさらに健康に、不健康な人をさらに不健康にするのです。(このテーマに関する最近の研究には、例えばマサチューセッツ工科大学のデイモン・セントラが2011年に著名科学誌の「サイエンス」に掲載した論文があります。)

社内の人脈ホモフィリーに潜む二重のハンディキャップ

 さて、ホモフィリーを企業にあてはめると、性別が1つの基準になることは言うまでもありません。すなわち男性社員は男性社員と、女性社員は女性社員とつながりやすく、結果、性別による「ホモフィリーな社内人脈」ができるのです。

 そして多くの日本企業は男性社員が大半ですから、必然的に「男性のホモフィリー人脈」が厚くなり、良くも悪くもその中でインフォーマルな会社情報がシェアされるようになります。企業幹部の多くは男性ですので、経営方針、人事制度の変更、社内の異動情報などのインフォーマルな重要情報は、いちはやく男性の人脈内で廻され、男性はますます情報優位になります。逆に少数派である女性のホモフィリー人脈は狭くなりがちですので、女性はますます不利となるわけです。

 正確には、ホモフィリーは女性に2種類のハンディキャップを与えています。まず、女性は「男性のホモフィリー人脈」に入りにくいため、そこで流れる情報・知識にアクセスしにくくなります。たとえば現ケンタッキー大学のダニエル・ブラスが1985年に「アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル」誌に発表した論文では、米新聞社の社員140人を調査した統計分析より、女性が男性中心の人脈の中で人間関係を作る難しさを明らかにしています。

 第2のハンディキャップは、女性のホモフィリー人脈が薄いことです。この点に関して、ハーバード大学のヘルミニア・イバラが1997年に「ソーシャル・サイコロジカル・レビュー」に掲載した論文を紹介しましょう。

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