社員にとってのターニングポイント、それは人事だ。社員にとっては最大の関心事である。その結果は「昇進」と「異動」に大別される(時には「降格」もあるかもしれないが)。

 人事は自分にとっては重大事だろうが、結果に目を奪われて自分のことしか考えないのは、ダメ部下だ。賢い部下なら、このタイミングで上司の存在を忘れない。部下を昇進させるも異動させるも、上司の評価が不可欠だからだ。

 その結果が示される日、すなわち内示日は、ある意味で正念場だと心得よう。多くの企業では内示日時が決まっていて、その時間になると応接室などに呼ばれ、「4月から君は課長になることが決まったよ」「本社の○○部に行ってもらう」という具合に、個別に内示が与えられる。その瞬間、その場所での振る舞い方がカギだ。対応を間違えると、将来の明暗が分かれることすらある。

喜ぶ顔を見せるのが部下の務め

 昇進のタイミングは、周囲の状況などを注意深く見ていれば、ある程度予想がつきやすい。実績を上げていれば「そろそろ自分の番のはずだ」という予感もあるだろう。ある程度心構えもできているだろうから、内示を聞いても「やっぱり」という気がして、驚きや感動はないかもしれない。しかし、そこで何の反応も示さない人は、賢い部下とは言えない。

 上司としては、そこで部下の嬉しそうな反応が見たいのだ。内示を伝えながら「こいつは、どんな顔をするのかな」と期待している。それはお土産のケーキや、誕生日のプレゼントを渡す瞬間と同じだ。できれば、ちょっと驚いた顔でもしながら、「本当ですか」と感動し、「ありがとうございます」と喜ぶといい。

 なにせ上司は、部下を昇進させるために、人知れず努力も苦労もしているのだ。

 本人がどれほど希望しようとも、ポストの数は決まっているわけだから、おいそれと昇進できるものではない。まず本人が実績を上げ、その役職をこなせる実力があることを示すことが前提だが、それを人事評価をする他のメンバーにまで認知されるように働きかけるのは、上司だ。上司の後押しなしの昇進はあり得ない。

 それが役目とはいえ、部下が喜んでくれなければ、上司は後押しした甲斐がない。どこか機械的に「ああ、そうですか。分かりました」という反応では、肩すかしをくらったような気になって、がっかりする。水面下の努力が報われない気がしてしまうのだ。

 部下に昇進を伝える時の上司の振る舞いも、様々だ。水面下の苦労をまったく語らない人もいれば、ここぞとばかりに「枠が少なくライバルも多かったから、君を引き上げるのは大変だったんだよ」と、自慢を始める人もいる。中には、そんな時だからこそ、日頃注意したかった部下の欠点を、ワザと全部ぶちまける人もいる。大きな収穫の前では、多少叱ったって、落ち込んだりせずに消化されるだろうという腹づもりがあるからだ。

 対応は様々でも、部下の反応を気にする気持ちは変わらない。上記の例なら、叱られつつも、ついついテレ臭そうな笑みがこぼれたり、手柄話だと知りつつも「部長のおかげです、ありがとうございます!」とはしゃいだりしてくれるほうが嬉しいものだ。

次ページ 希望を叶えたいなら、時を得よ