全5524文字

 本連載では、この夏(2013年)まで米ビジネススクールで助教授を務めていた筆者が、欧米を中心とした海外の経営学の知見を紹介していきます。

 さて、最近日本でよく聞かれるのが「ダイバーシティ経営」という言葉です。ダイバーシティとは「人の多様性」のことで、ダイバーシティ経営とは「女性・外国人などを積極的に登用することで、組織の活性化・企業価値の向上をはかる」という意味で使われるようです。実際、女性・外国人を積極的に登用する企業は今注目されていますし、安倍晋三首相もこの風潮を後押ししているようです。

 ところが、実は世界の経営学では、上記とまったく逆の主張がされています。すなわち「性別・国籍などを多様化することは、組織のパフォーマンス向上に良い影響を及ぼさないばかりか、マイナスの影響を与えることもある」という研究結果が得られているのです。

 なぜ「ダイバーシティー経営」は組織にマイナスなのでしょうか。何が問題で、では私たちはどのような組織作りを目指すべきなのでしょうか。今回は、世界の経営学研究で得られている「人のダイバーシティが組織にもたらす効果」についての知見を紹介していきましょう。

2種類のダイバーシティ

 「メンバーの多様性が組織に与える効果」は経営学の重要な研究テーマであり、40年以上にわたって多くの実証研究が行われてきました。その手法は(1)アンケート調査により組織のメンバー構成とパフォーマンスの関係を統計分析する、(2)様々なメンバーからなるグループ複数に作業をしてもらい、そのパフォーマンスを比較する、(3)取締役会メンバーの多様性と企業の業績(利益率など)の関係を統計分析する、といった辺りに大別されます。

 実は経営学者のあいだでも、「組織メンバーの多様性の効果」についてのコンセンサスは、長いあいだ得られませんでした。ある研究は「多様性は組織にプラス」となり、別の研究では「むしろマイナス」という結果が得られてきたのです。