このように、世界の経営学で分かってきているのは、組織に重要なのはあくまで「タスク型の人材多様性」であって、「デモグラフィー型の人材多様性」ではない、ということです。

 この結果を踏まえて敢えて乱暴な言い方をすれば、「男性社員ばかりの日本企業にとって望ましいダイバーシティは、多様な職歴・教育歴の『男性』を増やすことである」ということになります。逆にこのような組織が、盲目的に「女性だから」という理由だけで女性や外国人を登用することはリスクが大きい、ということになります。

 もちろん、私は「女性を登用するな」とか、「外国人を採用するな」と言いたいわけではありません。私個人は、ぜひもっと日本企業に女性や外国人がもっと登用されて欲しいと考えていますし、そういう社会であるべきだと思います。

 私がここで申し上げたいのは、「ダイバーシティ経営ブーム」のご時世で、「女性・外国人が加わることが、そのまま組織の活性化に繋がる」とか、ましてや「企業価値が上がる」と安直に考えてしまうことのリスクです。 そういう論説の中には、「タスク型」と「デモグラフィー型」の人材多様性を混同している部分もあるのかもしれません。

日本企業のダイバーシティはどうあるべきか

 実際、今の日本企業の課題は「タスク型の多様性」と「デモグラフィー型」がオーバーラップすることでしょう。

 これまで日本企業の多くは、男性社員中心で動いてきました。ここに新しい知見を求める(=タスク型の多様性を高める)には、日本人男性には無い能力や知見を持つ「女性」「外国人」をとりこむことが効果的であることは、私も間違いないと思います。すなわち日本企業の課題は、「タスク型の多様性」を高めるために女性・外国人を登用したいが、他方でそれが「デモグラフィー型の多様性」も同時に高めてしまう、ということなのです。

 ではどうすれば、女性・外国人を登用しながらも「デモグラフィー型の多様性」のマイナス効果を減らすことができるのでしょうか。ここでは経営学で研究されている2つの可能性を紹介しましょう。

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