法則1:ジョシ達の分析、ホーウィッツ達の分析のどちらとも、「タスク型の人材多様性は、組織パフォーマンスにプラスの効果をもたらす」という結果となった。

法則2:「デモグラフィー型の人材多様性」については、ホーウィッツ達の分析では「組織パフォーマンスに影響は及ぼさない」という結果となった。さらにジョシ達の研究では、「むしろ組織にマイナスの効果をもたらす」という結果になった。

 このように、過去の研究を集計したメタ・アナリシスから得られた事実法則では、組織に重要なダイバーシティとはあくまで「タスク型の人材多様性」のことであり、性別・国籍・年齢などの多様性は組織にマイナスの影響を及ぼすこともある、という結論になったのです。

多様性を仕分けよ

 なぜこのような結果になるのでしょうか。経営学者たちの間では、以下のような理論的説明がされています。

 まず、「タスク型の人材多様性」の効能は明らかでしょう。ここからは企業に不可欠な「知の多様性」が期待できるからです。

 この連載で何度も申し上げているように、これまでの経営学の研究蓄積で、「イノベーションの源泉とは知と知の組み合わせ」であり、そのためには「組織の知が多様性に富んでいること」が重要なことがわかっています。組織の知の多様性を高めるのに効果的なのは言うまでもなく、多様な教育・職歴・経験の人材を集めることです。「タスク型の人材多様性」は、組織が新しいアイディア・知を生み出すのに貢献するのです。

 これに対して、「デモグラフィー型の人材多様性」を説明する代表的な理論は、社会分類理論(Social Categorization Theory)と呼ばれる、社会心理学の理論です。

 同理論によると、組織のメンバーにデモグラフィー上の違いがあると、どうしても同じデモグラフィーを持つメンバーと、そうでないメンバーを「分類」する心理的な作用が働き、同じデモグラフィーを持つ人との交流だけが深まります。結果として「組織内グループ」ができがちになってしまいます。そして、いつのまにか「男性対女性」とか、「日本人対外国人」といった組織内グループのあいだで軋轢が生まれ、組織全体のコミュニケーションが滞り、パフォーマンスの停滞を生むのです。

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