だから、出会って3カ月は怒るべきではないのです。3カ月で相手のことを大して分かってもいないのに「あれがダメ、これがダメ」と言ってしまったら信頼関係はできません。

でも会社に入ると、「学生気分を抜く」などといって最初に厳しく接しますよね。

坪田:それが間違いです。

 500回言えば分かるというのも、だから上司は500回言えという意味ではありません。500回言わないと分からないのだから、5回とか6回言ったぐらいで「何回言ったら分かるんだ」などと言ってはいけないということです。だいたい「何回言ったら分かるんだ」という言葉は3回か4回言ったあたりで出てくると思うのですが、それでできるはずがないのです。

 それと、話す時はしっかり相手を見ないといけません。話していると意外と目線をはずしたりしているものなのです。僕が生徒を指導する時で60%。自分の中では90%見ているつもりでも、この数字です。普通の講師だと20%ほど。ほとんど見ていないのです。これだと相手がどう反応しているかも分からない。

部下を抱きしめるつもりで接する

会社だと部下に厳しいことを言わなければいけない時もあります。

坪田:叱りたかったら、上司が部下を抱きしめてあげればいいんです。もちろん実際に抱きしめたら問題でしょうから、抱きしめるような気持ちで接する。アンファスポジションと呼ばれる母親と子どもが向き合うときの姿勢を意識するのです。

 昔だったら飲み会などで信頼関係を醸成したのでしょうが、今だとそれも難しい。抱きしめるような気持ちで接して、信頼関係を築くことが必要なのです。

 あとは上司が部下のいいところを1分間で30個上げられるようにする。外形的なこと、社会的なこと、何でもいいのです。どんな部下だっていいところはあるはずです。部下であってもある分野においては「師匠」になってもらったっていい。僕の一番若い部下は釣りが趣味なので、教えてもらっていますよ。

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