それぞれの思いにふけりながら、無口な2人は、橋を渡り、ダウンタウンに入りました。「試験、終わってよかったね」「うん、そうだね」「また頑張ろうね」「じゃあね」。

 こういう経験を共有した良い仲間を得られたことも、留学したことの価値です。1人でいたくない時に、あんなに寒いのに、橋の上を一緒に歩いてくれる仲間なんてそうはいません。ちょっと暖かい気持ちになって、ウチの前で別れました。

 余談ですが、今では、この仲間で、駅伝大会に出ています。岩本さんが幹事となって、申し込みをしてくれるのです。4人の年齢を足すと200歳を超えるチームですが、それでも全体の上から3分の1には入る好タイム!相変わらず元気です。

 ビジネススクールに行く若者が激減している要因の1つは、日本企業が企業派遣生を出さなくなったことです。企業側にしてみたら、派遣しても帰国したら辞めていくので、投資効率が悪いということでしょう。他方、社員にしてみたら、ビジネススクールから戻って、「さあ、頑張ろう!」と思っていたら、「MBAの垢を落として来い!」と、地方支店でドブ板営業をさせられたとか。

 「お前は、2年も働かずにいい思いをしてきたんだ。その分、同期から余計な嫉妬をかわないように、今は辛抱しろ。その方がお前のためにもなる」。つまりはよかれと思っての処遇と言いたいのでしょう。嫉妬しているのは、その上司かもしれないですが…。

選抜しておいて叩きつぶすことに、何の意味があるの?

 日本企業は、MBAの使い方がかなり下手です。MBA留学に出しておいて、そういう使い方しかできない日本企業に嫌気がさして、会社に見切りをつけた人も大勢知っています。

 社員を平等に扱うと見せることがそれほどまでに重要だったのでしょうか、何のために選抜までして留学させたのでしょうか。せっかく投資したのに、そのリターンを享受するよりも、社員を平等に扱っていることを皆にアピールする方が、組織として重要ってことです。

 そんな会社が今は、グローバル人材育成の一環として、海外留学などを「ファストトラック」と言っています。実力のある特定の人材を優先して登用しようというわけです。MBAが優秀とは言いません。でもあの時代に、優秀な人材の牙を抜き、潰してこなければ、今になって右往左往する必要はなかったのに。

 とはいえ時代が移って、こういう真逆の人事で翻弄されようとも生き延びていくサバイバル力を、アメリカのビジネススクールは教えてくれたのかもしれません。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2014年8月18日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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