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60分間は休みなし

しかし、イメージだけ大きく掲げても、それを支える練習環境のハンディは大きいですね。

星野:そこは発想の転換でした。まず、練習が1日60分しかできないから足りない、ではなく、60分しか耐えられない練習、すなわち61分やったら倒れてしまうような密度の濃い練習にすればいいのではないか、と考えたのです。

 まず、練習で自分の番が来るまでに並んでいる時間をなくしました。何時間練習していても、そのうちの多くは事実上、順番待ちなどの休み時間なんです。2~3人一組にして、とにかく休みなしで動き回らせるようにしました。水を飲みに行くのも全力ダッシュ。先生が集合と言っても全力ダッシュです。

 水を飲むためや、先生に呼ばれて集まる回数が60分に何回あるかを数えてみたら、10回以上あったんです。よく、練習が終わった後、みんなで坂ダッシュ10本やるぞ、という指導者がいますが、それを60分の中に入れ込んでしまったようなものです。

 ダッシュだけではありません。ダッシュした後、最後に必ずしゃがませます。これは、タックルをするときの動作の練習につながります。うちの部員がほかの学校と合同の選抜チームに参加すると、監督の周りに集合するときにしゃがむので、「何なんだお前らは」などと不思議がられているそうです。

たしかに、それをしていない他校から見ると、奇異に見えるかもしれません。

星野:ほかの学校と同じやり方では勝てないからです。ダッシュだけではありません。練習中もそうですが、試合中も水を飲む時間にミーティングをさせます。だいたい60秒ぐらいですね。休む時間はないのです。なおかつ、ミーティングでは、「もっとタックルしろよ」「気合を入れていこう」といった精神論的な話はさせません。60秒後には次への行動指針が決まり、間違いなく組織力が上がるような話し合いをしなさいと言っています。

 トライを取った後も喜び合うのではなく、「トライは取れたけどこんなに長く攻撃に時間をかけるべきじゃなかった」「ラックちゃんとオーバーしている?じゃあ、次はちゃんと越えるところまで行こうぜ」というように。前回のプレーをどうすれば上回れるか、結論を出してから、次のプレーに臨みます。それが成功しても失敗しても、どちらでもいいんです。意図を持って、狙いを持ってやったかどうかが大切です。

練習や試合の時間の密度がとても濃そうです。

星野:例えば、毎日練習していたとします。きっと、スタッフの会議では、「明日は何のメニューをやる?」、と頭を悩ませることになります。練習時間が3時間あれば、2時間までは何をやるか決まったけど、残り1時間は何をやろうか、となります。この「何をやる?」はおかしいですよ。そんなことに悩むなら、必要最小限の2時間で生徒を家に帰して、勉強させた方がいい。

 練習時間が長いと、本来やらなくてもいい、ルーティンワークのような惰性的なメニューがどうしても入ってくるんです。それって意味がない。逆に言うと、3時間やりたいのに60分しかない場合、そのメニューをどうやって60分へ凝縮しようかと考えた方が、よっぽどいい練習になるはずです。