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 学生とはいえ社会人経験のあるMBAのチームですから、各チームにはマーケティング・財務・営業・企画・製品開発など、多様なバックグラウンドを持つメンバーがいます。ルイスは、各チームのメンバーにアンケート調査をし、「同チームの他メンバーの専門性をよく知っているか」、「同チームの他メンバーから得られる専門知識を信頼しているか」などについて質問しました。

 そしてそれらのデータを集計することで、各チームのトランザクティブ・メモリーの高さを指数化しました。さらに、コンサルティング・プロジェクト終了後のクライアント企業の評価などから、各チームのパフォーマンスも指数化しました。

 さらにルイスの研究が興味深いのは、「各チームがコンサルティング・プロジェクト遂行中に、どのくらいの頻度でメンバー間のコミュニケーションをとったか」を指数化したことです。しかもルイスは、メンバーがとったコミュニケーション手段を、(1)メール・電話によるもの、(2)フェース・トゥー・フェースでの直接対話によるもの、に分けてそれぞれの頻度を指数化しました。

直接対話がトランザクティブ・メモリーを高める

 ルイスはこれらの情報をもとに統計分析をしました。その結果からは、まず「トランザクティブ・メモリーの高いチームほどプロジェクトのパフォーマンスが高い」という結果が得られました。これはほかの多くの研究と同じ結果です。

 注目すべきは、もう一方の結果です。では、そのトランザクティブ・メモリーをどのようなチームが高めているかというと、それは「直接対話によるコミュニケーションの頻度が多いチーム」に限られたのです。それどころか結果の一部からは、「メール・電話によるコミュニケーションが多いことは、むしろ事後的なトランザクティブ・メモリーの発達を妨げる」可能性も示されました。

 実は、このようにトランザクティブ・メモリー形成に直接対話が重要であることを主張したのは、ルイスの研究が初めてではありません。1998年に米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のアンドレア・ホリングスヘッドが「ジャーナル・オブ・パーソナリティー・アンド・ソーシャル・サイコロジー」に発表した実験研究でも、 興味深い結果が出ています。