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 他方で、その専門知識がいざ必要なときに、組織として引き出せなければ意味がありません。したがって組織に重要なことは、いざとなったときに「あの部署の○○さんならこのことを知っているから、そこで話をきけばいい」というWho knows what が組織全体に浸透していることなのです。

トランザクティブ・メモリーはパフォーマンスを高める

 1980-90年代に米ハーバード大学の社会心理学者ダニエル・ウェグナーによって確立されたこのコンセプトは、今も世界の組織学習の研究者により研究が進められています。

 そして多くのグループ実験や統計分析などから、トランザクティブ・メモリーがグループのパフォーマンスを高める効果があることが確認されているのです。(仔細は拙著をご覧下さい)

 では、実際にどうすれば、トランザクティブ・メモリーを高めることができるのでしょうか。真っ先に思いつくのは、やはり組織メンバー間のコミュニケーションを増やすことでしょう。もちろん大企業になるほど、社員の間で交流をはかることは難しくなるわけですが、今では社内メールや社内イントラネットを活用することで、バーチャルなコミュニケーションを促し、互いの「誰が何を知っているか」を共有することができるかもしれません。

 ここでみなさんにも示唆のある研究として、米テキサス大学オースティン校のカイル・ルイスが2004年に「マネジメント・サイエンス」に発表した論文を紹介しましょう。

大事なのはメール・電話か、直接対話か

 この研究でルイスは、ある米国大学のMBA(経営学修士)の学生261人からなる61チームが、地元企業に行ったコンサルティング・プロジェクトを分析しました(米国のビジネススクールでは、MBAの学生が授業の一環として企業にコンサルティングをすることがよくあります)。