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症状が出てからでは遅い

ご著書でもおっしゃっていますが、若く見えるのが大事とは言っても、自分で鏡を見ると贔屓目というかどうしても「見たい自分」というのを見てしまうし、自分自身の変化には気づきにくい。やはり家族とか、周囲の人に時々尋ねるのがよさそうですね。

板倉:周囲から、最近ちょっと変わったと言われた方が、あらためて自分をよく見直してみたらやはり前とは何か違うというので、チェックに来られるケースもあります。

先生のクリニックは予防医学専門とお聞きしたので、あまり深刻な病状の方は来られないのかもしれませんが、そうしたちょっとした変化とか、ちょっと誰かから指摘されたということを無駄にせずにきっかけにする。特に新厄年に相当する年齢の頃は敏感になっておいた方がいいということですね。

板倉:1つのきっかけとして考えるとよいと思います。そうした年齢の頃に、生理的な内臓機能が変化するということですから。

どうしても虫歯と同じで、痛いとか何か症状が出てからでないとなかなか意識が向かないのですが、虫歯も一度なってしまうと、治療しても再度治療が必要になって、最後には歯が無くなってしまいます。

板倉:今の医療システムでは病気が発病したら治すというのが通常ですが、本当はその前、健康な状態のうちに対応をしておく方が望ましい。症状が出てからだと医療費もかかります。

治療のために時間もかかり、仕事にも穴を開けなくてはいけなくなります。

板倉:医者も反省しないといけないんですよね。今の医療システムの在り方をね。

 来月(2014年10月)、日本臨床栄養学会で特別講演を頼まれているんですが、そのテーマとして、境界期の人たちにどう対応するかということを取り上げようと思っています。境界期というのは病気になる前の、健康診断で治療はまだ必要ないけど注意してくださいと言われる段階。いわば病気の予備軍ですね。

 この方たちは、本人は何も症状や自覚はなく健康だと思っているけど、健診の数値は受診勧奨値(これ以上になったら病院で受診しなさいという値)のちょっと手前。正常の範囲内ではあっても近い将来に病気を発症するかもしれない人たちです。

健康診断でちょっと数値が高め(低め)というのはよくあると思いますが、もともとというか、ずっとそのレベルでとどまっている場合はどうでしょう。

板倉:少し異常値でも、そのレベルでとどまっている場合は何でもないことが多いですね。ただ、ほかに弱点がある場合、例えば血圧がやや高めのまま変わらなくても、血管が弱かったりすると、くも膜下出血を起こしてしまうこともあるかもしれません。弱点が重なると、正常の範囲内といっても問題がありますね。

 そういう状態をどう見つけて、その人にとってよりよい健康状態をどう保つのか。それをもっと研究していかないといけません。

そうした予防に重点を置いた病院というのは、まだそれほどないですね。

板倉:今の医療システムが、病気にならないと診療報酬の点数がつきませんからね。例えば糖尿病の数値がちょっと高いといって来た患者さんに、薬を処方せずにもっと運動しなさいと言っても医者は儲からない。

 でも、そういう境界域にある人をサポートするシステムをどう作り上げていくのかをもっと提言しないといけないと思います。

予防に力を入れるとあつれきもあるのでは。

板倉:まあ、製薬会社は反対するでしょうね。でも、日常生活に何か問題があればそちらを改善していく方がいい。例えば栄養指導から何ができるのか。境界域の人をいかに発見して、どういう評価方法で評価すれば適切な栄養指導ができるのか。今の国の摂取基準やガイドラインでは不十分ですから。